第11回日本クリアランスギャップ研究会学術集会
大会長挨拶

 この度、第11回日本クリアランスギャップ研究会学術集会を、平成28年8月27-28日に岡山コンベンションセンター(岡山県岡山市)において開催させて頂くこととなりました。

 クリアランスギャップ研究会は2006年に第1回学術集会が開かれて10年が経過しました。クリアランスギャップは透析前後のBUN採血で、脱血不良や再循環などバスキュラーアクセス(VA)不全を発見できるローコストで簡便な血液透析モニタリング方法として認知されるようになりました。一方で、VAには再循環や脱血不良などの異常がないにもかかわらず、クリランスギャップ値がマイナス値、あるいは10%以上のプラス値を示す症例があり、なぜそうなるのか、議論が十分になされていないのが現状です。クリアランスギャップは実測Kt/VがKt/Vの理論値にどれくらい到達していないかを評価する計算式ですが、体液量VをワトソンPE式で推定体液量として算出するため、実測体液量とのずれが生じることがあり、体液量のずれがプラスあるいはマイナス値に影響を及ぼすことがわかってきました。実測体液量が推定体液量より多い場合はプラス値、逆であればマイナス値として表示されるわけです。クリアランスギャップ値が高いからVA機能が悪い、低いからVA機能が良いといったVA機能評価の良悪のみにとらわれるのではなく、各透析患者のステータスとして評価することに目を向けるときが来ているのではないかと思います。腎臓リハビリテーションの分野にはなりますが、筋肉量が維持され、ADLが自活できるよう維持できている透析患者の生命予後は良好とされています。データ量としては不十分ですが、INBODY-S20を用いた体内組成分析では実測体液量と筋肉量が高い相関を示し、両者ともクリアランスギャップ値と正の相関を示すことがわかってきました。当然のことながらクリアランスギャップと生命予後の関連はどうなのか関心が寄せられることは自然なわけです。近年、長期透析患者や高齢患者、糖尿病患者の増加により、ADL自立困難となる状況が増加しており、ADLが自立するようリハビリテーションが非常に重要なウエイトを占めるようになりつつあります。クリランスギャップ値から筋肉量の多少をスクリーニングし、リハビリテーション対象患者を割り出し、栄養をしっかりと摂取した上で筋肉をつけていけるよう、管理栄養士、理学療法士にも協力がお願いできる環境を整えることが必要であり、多職種に参加していただけれるようなセッションを企画したいと考えております。また、クリアランスギャップは低コスト、低侵襲という特徴があり、低侵襲に焦点を当て、エコー下穿刺ライブセッションや低侵襲を絡めたセミナーなど、メディカルスタッフに興味を持っていただけるプログラム構成にしております。

 生活の質の向上に結びつくようクリアランスギャップを活用できれば本研究会が血液透析モニタリングから違った方向で役割を果たすことが期待できるのではないかと思います。そこで、今回の大会テーマは「透析効率モニタリングを生活の質向上に繋げられるか」~クリアランスギャップの新しい価値を模索する~とさせていただきました。ポスターには与島から鷲羽山を望む瀬戸大橋を載せていますが、速い瀬戸内海の潮流にも動じない瀬戸大橋と瀬戸大橋の向こう側に新しい道が続いていくことにクリアランスギャップのイメージを重ねています。

 会場である岡山コンベンションセンターは、岡山駅西口直結であり、アクセスが良好な場所に位置しています。また、三大名園のひとつである後楽園(8/1-8/31の夜間は幻想庭園も開催されています)や倉敷美観地区をはじめ有名な観光地も近在しております。

 多くの皆様の演題応募とご参加を心よりお待ちしております。

第11回日本クリアランスギャップ研究会学術集会 大会長
櫻間 教文
(医療法人創和会 重井医学研究所附属病院 外科)