会長挨拶
第23回 日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)
中国・四国地方会 会長 塩出 宣雄
広島市立広島市民病院 循環器内科

 この度、第23回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)中国・四国地方会の会長にご指名いただき、大変光栄に存じております。本会の開催にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
 わたしが初めてステントをみたのは、1991年研修していた小倉記念病院にてPalmaz-Schatzステントの治験が始まったときでした。当時は5Frのプロテクティブシースにステントバルンを挿入して、脱落を防止しつつデリバリーしていました。使用するカテーテルは8Frと太く、デリバリーも困難ではありましたが、当時バルンしか使えなかったインターベンションにおいて、ステントは画期的なものでありました。バルンのみでは術後の残存狭窄度は25-50%であるのに対して、ステント挿入後には残存狭窄度が0%になりました。また、バルンにて冠解離が生じても、ステントできれいにベイルアウトできました。3-6か月フォローCAGにて再狭窄も極めて低いデータが得られました。ただ、入院中に突然死したり、亜急性の血栓症にて急変したりする症例があり、当時からステント血栓症の問題も指摘されておりましたが、実際の頻度もまだ明らかになっていない時代でした。
 その後、抗血小板剤の使用にて早期の血栓症が減少し、ステントも改良され、ステントはインターベンションの発展に大いに寄与しました。さらに、2004年より、本邦においても薬剤溶出ステントが使用可能となり、これからはCABGにまわる症例はなくなるのではないかと本気で思ったのを思い出します。その後、遅発性血栓症の問題が明らかになり、薬剤溶出ステントへの逆風がふきました。しかし、実臨床の成績では、血栓症の問題はあるものの、有効性の方が優れるというエビデンスが確立されました。
 しかし、頻度は少ないものの、薬剤溶出ステントの遅発性血栓症、遅発性再狭窄は、残された問題かと思われます。これまで、薬剤が溶出した後に冠動脈内に残るポリマー、ステントプラットフォームが遅発性の問題に悪影響する可能性が示唆されてきましたが、昨年より生体吸収性のポリマーを使用したステントが使用可能となりました。さらに、本年からプラットフォームまで消失するスキャフォールドが使用可能となります。それらのデバイスにて、遅発性の問題が解決されるかどうかは、今後のデータの蓄積にて明らかになるかと思われますが、インターベンションの発展に多大な貢献をしてきたステントの進歩も最終章に来たのではないかと思われます。
 現在は、ほとんどの病変にステントが挿入されているのが現状ではないかと思われます。しかし、いまだにステントデリバリーが困難な病変や、ステント挿入には不適な病変があるのも事実であり、病変によってはステントレスPCIが見直されつつあります。小血管への薬剤溶出バルンが保険適応となりますし、DCAもリバイバルされる予定であります。
 以上のことをふまえて、今回のテーマは“beyond the stent”といたしました。
 われわれは冠動脈インターベンションに力を注いできました。最近は、structural heart diseaseへのインターベンションも急速に発展しつつあります。カテーテルインターベンションの進歩にて、救われた患者さんは数多くいらっしゃると思います。しかし、インターベンションにて治療できるのは、心臓病患者さんの中の限られた症例であるのも事実です。現在、iPS細胞を使用した再生医療が循環器領域でも研究されております。未来の治療と思っていた再生医療が臨床に登場するのもそう先の話ではないようです。特別講演として、iPS細胞応用の循環器領域においての現状と今後の可能性につき、名古屋大学の柴田玲先生におこしいただく予定です。また、新たな企画として、かねてから要望の多かったビデオライブを予定しております。
 CVIT中国四国地方会は、故光藤和明先生のもと、常にまとまって来ました。JASIC、JACCTに学会が分かれていた際にも、中国四国地方会はいち早く合同開催しました。中国四国地方会がさらに活気のある学術集会となることが、故光藤先生への恩返しではないかと考えます。どうか、多くの会員のみなさまのご参加を期待しておりますし、活発で建設的なご討論をお願い申し上げます。