学会長挨拶と関連情報
 2020年9月12日・13日に岡山県倉敷市・川崎医療福祉大学において 第4回学術集会を開催いたします。
超高齢化社会の時代を迎える中で、我々医療や介護を担う者は地域包括ケアシステムの構築を通して地域社会を支えるという重要な役割を担うことになります。その実践の中でアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の重要性については誰もが認識するところであり、様々な取り組みによって次第に広がりつつあることを感じます。

 これまでがACPの必要性の理解の段階であったとすれば、これからは更に一歩進んで、ACPの実践上どのような課題が待ち受けていてどのように解決してゆくのか、といった次のステージへと踏み出さねばなりません。同時にACPについての議論の場も、病院や大学などの限られたフィールドの中から飛び出して、本来の患者さんの日々の生活の場へと広げてゆく段階に来ていると思います。
患者さんは地域での「生活者」であることから、病院だけでなく在宅や施設といった生活環境においては、ACPの実現には医療職のみならず介護職や行政、福祉ほか、生活に関わる数多くの職種の協力が必要になってきます。ACPの質的向上とともに、裾野の拡大が必要です。
そこで、大会のテーマは 「多職種で支えるエンドオブライフケア」 ~よりよいコミュニケーションをめざして~ としました。

 多職種で1人の患者さんを取り巻いて支えてゆくために必要なことの1つは「よりよいコミュニケーション」にあると考えます。
 患者さんとのかかわりのなかでどれだけ情報が得られ、その人を理解してあげられるか。
 病や衰弱の進行など変わりゆく自らの身体状況に対する不安、それまでの人生での生き方やこだわり、残される人々への思いや気がかり心配など、患者さんの生活に根ざしたスピリチュアルな部分への関わりも重要となるでしょう。多職種のスタッフとの間での会話や、共に過ごす時間によって変化が起こり、お互いに影響を与えながら意思決定を支援しその実現に向かってゆく。そのためによりよい意思疎通・コミュニケーションが欠かせません。

 高齢者をとりまくACPの問題・課題など、現場での取り組みで苦労している在宅スタッフの苦労を病院や大学の立場でどうシェアしてゆくか。
 在院日数が短縮化されるなか、病院でのACPの課題が退院して在宅や施設に帰ったときにうまく在宅や施設のスタッフに引き継がれるかどうか。
 意思決定をしたくない人に無理にACPを強いることなく、自ら意思表示したくなるようにもってゆくにはどうすれば良いか。
 ACPさえ表明されていれば問題はないのか、果たしてその通りに実現されるのか。
このような課題の解決のために、多職種でのアプローチ、また多職種スタッフ同士の連携・コミュニケーションが重要です。

  集会での講演や発表などで多くの知見を得たり貴重な経験をシェアしたりして、エンドオブライフケアに関わるなかで“この仕事でよかった”“一緒に関わって良かった”と喜びを感じられるような、そんな機会となることを願っています。

 これまでの学術大会は東京・名古屋と大都市圏での開催でしたが、第4回は岡山県倉敷市という地方都市での初めての開催となります。
皆様の御参加をお待ちしています。

日本エンドオブライフケア学会 第4回学術集会
学術集会長  小森 栄作
ももたろう往診クリニック 院長