第25回日本在宅ケア学会学術集会 ご質問への回答について
第25回日本在宅ケア学会学術集会の講演について皆様からいただいたご質問に対し、講師の先生方がご回答くださいました。
Web1会場
学術集会長講演:主体的な選択を地域・多職種で支える仕組みづくり
Q1. 地域連携パスが既に出来ていたと思いますが、そちらを改良したと捉えてよろしいでしょうか。
A. ご質問ありがとうございます。確かに地域連携パスの改良とも言えますが、地域連携パスと異なる点は、アウトカムを明確にしていないことです。地域地域、病院組織で課題が異なりますので、その地域病院が合意した課題解決、目指す姿に向け、どのように取り組むのか、作りあげていくプロセスを重視しています。
(森下安子講師)
教育講演Ⅰ:在宅ケアにおける多職種で関わる服薬管理
Q1.

多くの薬を服用しなければならない場合の服用時間の改善や休薬方法はとてもよくわかりましたが、飲み合わせ等の問題はどのように改善するのかが気になりました。

A. 飲み合わせについては時間の都合上略しました。それだけで1時間の講義となります。
まず3つのキーワードを抑えてください。
① 相互作用:併用するとどちらかの作用が増強または減弱してしまうことがある場合
② 併用禁忌:①の中でも特に強い相互作用により状態の悪化が起こる場合、禁忌となります。
③ 使用禁忌:腎、心、肝機能低下時、緑内障、糖尿病など疾患や状態に応じて使用が禁じられる薬剤もあります。
*これらに当てはまる薬剤の全てを記憶することはたいへん難しいと思います。専門である薬剤師にまず確かめてもらう方が見落としがなく、医療の安全につながりますし、結果患者さんのためになると考えます。
(川添哲嗣講師)
Q2. 薬剤師における、服薬管理指導で保険による違いがありましたら教えてください。
A. 「在宅における服薬管理指導の保険による違い」についてお答えします。薬剤師の行うことに保険による違いはありません。やるべきことや考え方は講義の中で語った内容です。
*点数は非常に複雑なのでキーワードをもとにネット検索でご自分でお確かめください。医療保険と介護保険で点数は異なります。
⑴医療保険:訪問薬剤管理指導料
⑵介護保険:(薬剤師)居宅療養管理指導費
*介護認定で要支援1〜2、要介護1〜5の方は自動的に居宅療養管理指導費の算定になります。
*いずれの場合も医師、看護者、薬剤師らはもちろんのこと、多職種での連携が必須です。⑵はケアマネジャーとの連携も必須となります。 
(川添哲嗣講師)
Web2会場
シンポジウムⅠ:“高知家”の挑戦!人口減少・高齢化地域における看取りまで支える地域包括ケアに向けた取り組み
※当日、各シンポジストの先生方にお答えいただきましたが、補足がございますので、この場で掲載させていただきます。
Q1. 私達の地域では、行政(市)が全くやる気がありません。連携会議もあるのですが、形骸化し機能してないのに、積極的な話し合いを提起しても「それはあるから」と参加してきません。そのような行政にはどう働きかければよいでしょうか。
A. <廣末ゆか講師>
行政はどうしても国から言われたこと、制度上のことを事業として遂行していかなければならないので、あまり地域のニーズを重視して、こだわって「解決するぞ」となりにくいのが現状ではないでしょうか。統計上の分析だけでは、その地域の課題は見えません。今、気になるのは、数的な統計からの課題、いわゆる数が多い少ない、他地域、全国平均との比較だけで、課題としてあげていないでしょうか。現場の住民や介護医療職の声から、数を横目で見ながら、我が地域の課題は何か、こだわってみることが大事だと思います。
大学の先生方は研究職としてのお力があります。行政の中で、今やっている「事業」のアウトプットだけでなく、アウトカムを出さないと課題は見えないことに気づかせる戦略が必要かと考えています。我が地域をその行政がどうしたいのか、本音を語ってもらい、興味関心がどこにあるかから一緒に取り組み、制度上やらないといけないこととつなげて考えることができるということに、気づいてもらうなど、色々とやり方はあると思います。これができれば、「形骸化」している会議に心拍音が聞こえてきだすと思います。「事業」ばかりに翻弄され、アウトプットを出せばよかった時代が続いている行政において、アウトカムを出すと、課題がより明確になり、次のやらねばならないこと、やりたいことが見えてきて、面白くなってくると思うのですが・・・。整理をしてもらえる、見える化してもらえる外部の存在は大きいです。
アプローチのしかたによって、「事業」が増えるのか、というものが常によぎっている行政にとって、構え、防衛機制が働いてしまうのです。みんなで知恵出し合うことの楽しさ、演繹的なやり方でなく、トップダウンでなく、現場の声から何かを作っていく面白い体験を体得できるアプローチが要るのではないかとおもいます。

<下元佳子講師>
どのような行政であっても悪くしたいと思っている人はいないと思います。見ている視点が違うことは多いと思います。専門職とでは見方そのものが違ったりします。なので、私たちは働きかけるときに、ツール(取り組み)だけではなく、それをすることでどのような結果が得られるのかということをできるだけ伝えるようにしています。行政側が、自分たちのやらなければいけないこと、目的とすることに、この人たちの提案していることがツールとして使えるではないか、この提案に乗ることで結果が出せると乗ってもらえるように・・・。やりたいことだけ伝えるのではなく、目的や課題、そして取り組むことでどのような結果を生むのか、そんな提案書や企画書まで作成して働きかけることも少なくありません。暇な人はいませんし、みんなやらなければいけないことを多々抱えているので、自分のやらなければいけないことにプラスになると思ってもらえるような働きかけをする感じです。関係性を作って行くことも同じだと考えています。この人とつながった方がいいと思ってもらえる努力をすることって大事だと思っています。この程度のお返事しかできなくてスイマセン。でも、一度、それでうまくいけばどんどん連携・つながりは深くすることは容易です。頑張ってください! 
Q2. 地域~病院との繋がり、多職種連携は素晴らしいと思います。自分の県では、行政、病院、在宅の繋がりはまだまだ足りていないのが現状だと感じています。各役割の中で、連携発信の第一歩としては、どのように進めていくのがいいのでしょうか?各々の立場でご意見を頂けると幸いです。
A. <廣末ゆか講師>
個別事例から一緒に検討し、他機関多職種と関われば、ご本人家族が変わっていく・・・という体験を共有しながら、地域の課題の共有を図っていく。病院からだと、そんなアプローチをしてみることが、顔の見える関係、互いの役割機能、役割責任の相互理解につなげていけれるのではないでしょうか。そこから退院支援の仕組みの必要性や包括的な地域のケアシステムに何が必要なのか、どんな地域になったらいいか、共通認識をはかっていきたいね、というところで事業化の必要性を行政と「ガッテン」していくのは(お互いに納得できるようにしていくのは)いかがでしょう。互いに目指す姿と現状のギャップを認識しながら、妄想しながら実現化していく。そのためには、仕掛けとか戦略とかいいますが、相手をその気にさせる、いわゆる動機づけしていく過程を大事にすることも必要かと思います。

<下元佳子講師>
私たちは、連携をよくするということを目的としたことが無いので、ちょっとずれるかもしれませんが・・・。地域活動をしている中で、これは行政も絡んだ取り組みでなければ、動かないと思えば、行政に・・・これは、地域の病院も巻きまなきゃと思えば病院を訪ねる。目的があって、そのために必要な連携を、必要性に合わせて取れるように動いています。つながり、連携は、相手に望むのではなく、自分たちとつながりたいと思ってもらえることが大事だと感じています。
相手が何ができていない、何をしてくれないではなく、自分たちが何ができるのかを伝える、でも、その伝え方も、上から目線ではなく、相手にとって役に立つと思ってもらえることが大事だと思ってかかわりを作っています。何かをするために、何かの目的があって・・・そして「連携」はあくまで、目的に向けて課題を解決するために必要な、ツールだと思っています。そうすると、どのようにつながりを作るかは、目的に応じてわかってくるのではと思います。これは一人のケースを通しても同じだと思っています。