Q&A
特別講演1 
松岡順治先生へのご質問
【ご質問】
医師の治療が患者さんにとって明らかに大きな負担となっている、死期を早めていると感じる時、その薬の説明をするのが心に重いです。患者さんの治療の選択だからと思いますが、今回のご講演で癒しのことを学び、患者さんによりそうために、どういった言葉があるのか、よい言葉があれば教えてください。
【ご回答】
残念ながらお答えできるような万能の言葉はありません。むしろ言葉に頼ることなく患者さんと対応することが大切だと思います。
例えば万能の言葉があったとして患者さんのもとに1回だけ行ってそのことばをかけるのと、言葉はなくても何回も患者さんのもとに行くのでは、どちらが患者さんの信頼を得られるでしょうか。上手な言葉はなくても、ただ黙ってそばにいるだけでも信頼を得ることができるのです。
その際に、WPCではケアを提供する側は「傷ついた癒し人」であることが必要であるとされます。つまり私たちが患者さんと同じ苦しみを思いやることによりその苦しみを共体験、あるいは共有することによって患者さんを癒すことができるようになるとされています。患者さんは自分の辛さが理解されたと理解した時にはじめて「癒る」ことができるのです。
患者さんの辛い苦しみを理解し、そばにいつづけることが大切です。
シンポジウム2 S2-2
祝千佳子先生へのご質問
【ご質問】
貴重なご講演ありがとうございました。当院も数字としてはとっていないのですが、麻薬の自己管理している患者さんは少ないです。
先日あった事例なのですが、病棟のがん患者さんで看護師さんを呼ぶのを躊躇ってしまって躊躇してしまうと言われて患者さんの痛みの理解、薬の理解も良好だったので自己管理を提案したのですが、看護師さんより手が震えてこぼす可能性があるのでやめてほしいと言われました。その時は看護師さんに頻繁に訪室していただくという対応をしたのですが、先生ならどのように対応されるか、お話うかがえたらと思います。よろしくお願いします。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。
もし同じ状況にあったとすれば、まず、「手が震える」という状況について、年齢的なものなのか、病的なものなのか、常に起こっているのか、実際に訪室し震えの程度やこぼすリスクなどを一旦自分でも評価します。次に、申し出のあった看護師さん単独とではなく、看護師チームとのミニカンファレンスをします。その中で、こぼす確率がどの程度予測されるのか、すでに普段の配薬時も看護師の介助がないと服用できないのかなど、自身の評価と看護師側の評価をすり合わせます。ミニカンファレンスを行う理由は、看護師は日夜担当が変わるので、看護師側がチームとして納得した上で自己管理を始めることが重要だと考えるからです。
痛い時に看護師を呼ぶのを躊躇する患者さんに痛みや薬の理解度を評価された上で、薬剤師として自己管理を勧められたことは、妥当性は高いと思います。ただ、入院中は麻薬をこぼすとインシデント報告が必要だったりもするので、こぼすリスクが非常に高い場合は自己管理を強く勧めることは難しいですね。
自宅で自己管理できる環境でも、必ずしも痛い時にタイミングよく飲めている患者さんばかりではないので、いかにレスキューをタイミングよく服用して効果を実感してもらうかの指導も重要だと思います。これからも患者さんの苦痛に寄り添える薬剤師として関わられているのを応援しています。
シンポジウム2 S2-4
二階堂崇先生へのご質問
【ご質問】
・在宅で麻薬など保管するための金庫を置いてもらうことがある、とのことでしたが、貸金庫か何かを用意されているのでしょうか?

・在宅での管理について、詳細にご教示いただきありがとうございました。
在宅での注射薬の金庫管理、目から鱗でした。具体的にどんな金庫を導入し、管理(鍵の管理等)はどうされているのかご教示いただけましたら幸いです。
【ご回答】
設置してしまう迄の本式の金庫を用意した事は有りません。 ホームセンター等で購入できる手提げ金庫(ほぼ鍵の掛かる頑丈な箱)を用意し使用者で鍵を共有して運用しています。
今の所、金庫と鍵の保管場所を特定して共有する運用でトラブル有りませんでした。
状況によっては、合鍵を作成して各事業所に配る事も想定しています。
シンポジウム3 S3-1
岩井峻一先生へのご質問
【ご質問】
フェンタニル舌下錠について質問です。フェンタニル舌下錠は強オピオイドが低用量の患者へ提案しづらいと感じていますが、どのような患者に対してベースが低用量でも舌下錠の導入を提案していますか?またフェンタニル貼付剤は定常状態に達するまでに時間を要するため、スイッチングと同時にフェンタニル舌下錠の導入を提案することがなかなか出来ないのですが、本症例はトラマドールから増量のスイッチングであったため同時に提案したのでしょうか?
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。結論から申し上げますと、本症例はスイッチングと同時にフェンタニル舌下錠を提案しています。私もご質問にある通りベースが低用量である場合は提案しにくいと感じることはあります。この症例に限ったことではないですがやはりリスクアンドベネフィットを検討してベネフィットが勝るようなら提案しております。貼付剤の定常状態に関しては、フェンタニル舌下錠の至適用量はベース薬剤の用量に必ずしも依存しないと認識しておりますので本症例は同時に提案しております。曖昧な回答で申し訳ありません。オーバードーズのリスクはゼロではありませんが、そのことを多職種で共有しスイッチング後やレスキュー使用後の症状・副作用マネジメントによりフォローアップしていくことが重要だと考えております。
シンポジウム4 S4-2
吉田謙介先生へのご質問
【ご質問】
口腔粘膜炎のチェックリストを当院でも使用したいと思いましたが、一般公開されているものなのでしょうか?参考となるツールなどあれば教えてください。
【ご回答】
客観的な項目となっていたCTCAE ver3を参考に、歯科医師から評価方法のポイントを教えて頂き作成しておりました。現在はver 5となっておりますので、そちらを参考にしてみてはいかがでしょうか。
シンポジウム4 S4-2
吉田謙介先生へのご質問
【ご質問】
患者さんの口腔粘膜保護に、OTC医薬品、歯磨き剤、ガム、キャンディーなどの利用は考えられないでしょうか。龍角散のど飴があるように、半夏瀉心湯ココア味(口腔安)などのキャンディーを開発したらいかがでしょう。
【ご回答】
とても面白いアイデアだと思います。市販薬などの場合、患者の購入負担なども出てきてしまいますね。半夏瀉心湯ココア味のキャンディーが味や匂いなどをクリアできれば、実装できる可能性は十分にありますね。素晴らしい提案をありがとうございます。
シンポジウム4 S4-2
吉田謙介先生へのご質問
【ご質問】
アズノールの軟膏を口腔内の潰瘍部位に塗っているのでしょうか?経験がなく、味や使用感、唾液に混ざったものはそのまま内服すると指導するのかなど教えていただきたいです。
【ご回答】
アズノールは粘膜保護を目的に使用しているので、潰瘍がなくても口腔全体に、そして、潰瘍部は厚めにと指導しています。手が難しければ、綿棒などを介してとなります。塗布したものを舌を使って口腔内に塗り広げて頂く場合もあります。脂溶性なので唾液とは混ざりにくいと思いますが、ベタつき感があるので、使用に抵抗がある方にはエピシルを処方していただく場合もあります。順番として必ず、うがい→保湿の順番を守ってもらうよう指導しています。
シンポジウム4 S4-2
吉田謙介先生へのご質問
【ご質問】
骨破壊的同種造血幹細胞移植の患者さんには予防的に半夏瀉心湯を使用するとおっしゃっていましたが、頭頸部放射線化学療法の患者さんには半夏瀉心湯は使用しないのでしょうか?
【ご回答】
使用することもあります。科の方針などもありますが、頭頸部放射線化学療法の患者さんには予防的に処方されることはなく、担当医の裁量などによって処方される場合があります。
シンポジウム4 S4-2
吉田謙介先生へのご質問
【ご質問】
とても参考になるご発表ありがとうございました。
・エピシルを早めに使用すると記載してありましたが、GRADE3.4の方が対象になるという認識でよろしいでしょうか?それよりも前(GRADE2以前)で導入することはありますか?
・半夏瀉心湯の使用方法はは内服でしょうか?含嗽でしょうか?
【ご回答】
エピシルに関してはGrade2以前でも導入する場合はもちろんございます。当院ではなるべく早期からの使用が望ましいと考えております。半夏瀉心湯は含嗽を行ってもらい、内服もできそうであれば内服という指導を行っております。1番の目的は半夏瀉心湯による抗炎症反応を期待しているため、なるべく高頻度での含嗽が望ましいと思います。
シンポジウム4 S4-2
吉田謙介先生へのご質問
【ご質問】
貴重なご講演ありがとうございました。口腔粘膜ケアの重要性や、具体的なケア方法などをご提示くださり、大変勉強になりました。

当院では、頭頚部癌に対する放射線化学療法を施行する際に、治療1日目からアズレンうがい液を開始、軽度粘膜炎出現後に半夏瀉心湯、重症となるとエピシルを開始しております。
エピシルの粘膜保護作用は8時間程度持続するとのことですが、エピシル使用中の患者さんに対してもアズレンうがい液や半夏瀉心湯の含嗽は有用でしょうか?

ご教授頂けると幸いです。よろしくお願いいたします。
【ご回答】
丁寧なご質問をありがとうございます。エピシルとアズレンうがいなどは役割が異なると考えております。つまり、口腔洗浄にはアズレンうがいなどですが、エピシルは保湿効果や除痛を期待しての使用となります。勝良先生や曽我先生のご発表にもございましたが、洗浄+保湿はセットだと思います。保湿をする理由として、口腔内の水分量の保持がとても大切になるためです。エピシルは粘膜保護と疼痛緩和を主目的に使用しているので食事の10分ほど前に水で含嗽して頂きエピシル塗布しています。
シンポジウム4 S4-3
勝良剛詞先生へのご質問
【ご質問】
ポビドンヨードはどのようなときに使用しますか。
【ご回答】
基本、ポビドンヨードは使用していません。アルコールが含まれ、疼痛や口腔乾燥を誘発する可能性があるからです。
シンポジウム4 S4-3
勝良剛詞先生へのご質問
【ご質問】
エベロリムスの口腔粘膜炎の予防目的で「デカドロンエリキシル」を含嗽で使用している患者がいます。先生は同じような治療をされたことはありますか?または本来口腔用ではないステロイドの外用または含嗽を使用されたことがありますか?分子標的薬だと、移植と違って先が見えません。いつまで続けるのが適切なのでしょうか?
【ご回答】
予防目的でステロイド製剤は使用していません。エベロリムスは口内炎の発生率の高い分子標的薬ですがグレード3以上は10%未満です。しかし、口内炎出現時には局所の場合、デキサルチン軟膏、広範な場合はサルコートを使用しています。以前、サルコートで著効しなかった症例にタクロリムス軟膏を使用したことがあります。著効しました。
シンポジウム4 
すべての先生へのご質問
【ご質問】
口腔粘膜障害に対しての漢方使用について質問です。口腔粘膜障害・口内炎にたいして甘草湯や桔梗湯がきくとされていますが、使用経験、またはそれぞれの分野で使用に関して言われていることなどありましたら教えていただけたらとおもいます。
【ご回答】
【勝良先生ご回答】当院では半夏瀉心湯が主に使われています。小児では味が悪くコンプライアンスが悪いので、ココア味にした氷をなめてもらったりしています。
シンポジウム6 S6-1
飯原大稔先生へのご質問
【ご質問】
オランザピンの開始時期はどのくらいが平均でしょうか?また、開始時期によって効果に差はありますか?
【ご回答】
オランザピンの投与はシスプラチンベースの化学療法では、J-FORCE Studyの結果に基づき化学療法初日の夕食前から開始されます。
前日から開始した大規模試験はないため、開始時期の違いによる効果の差については明確になっていません。
またAC療法では化学療法前に投与されている試験が多いようです。エビデンスに基づき投与する場合は化学療法日は、抗がん薬投与前、翌日以降は朝となります。
シンポジウム6 S6-3
川尻雄大先生へのご質問
【ご質問】
末梢神経障害への薬物治療介入のタイミングに悩むことがあります。
基本的にはG2からが薬物治療の検討対象となると思うのですが、軽度な場合「生活に支障が出ていなけれこのまま様子を見ていきましょう」と、生活指導を含めて説明することが多いです。
例えば化学療法終了後時間が経っても軽度な末梢神経障害が遷延し、患者がその点を懸念している場合には薬物療法の対象となるのでしょうか。また、その場合どのように薬剤を選択すべきでしょうか。
【ご回答】
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
薬物治療介入のタイミングと治療薬の選択に関しましては、現状のエビデンスではなかなか難しく現場でも悩ましい部分であると思います。
治療が継続される限り、神経障害は悪化していくものですので(特にプラチナ系の場合、コースティングを起こし、減量や中止後にも悪化することが多いですので)、軽度のうちから何かしらの介入を行うということは良いことだと思われます。しかし、残念ながら神経障害の発現を抑制する(進行を遅らせる)という十分なエビデンスがある薬剤がありません。ASCOのガイドライン上、治療として使用が容認されているデュロキセチンであれば、痛みのあるオキサリプラチン使用患者の方に対してであれば使用してよいと考えます。ガイドラインで引用されている元の報告(Smith et al. JAMA 2013)では治療でGrade1以上の神経痛のある患者で疼痛への改善作用が証明されていますので、G2を待たず軽度の場合でも使用することは可能だと思われます。しかしあくまでも神経痛に対する疼痛緩和作用であると思われますので、進行を抑制する訳ではないと考えられます。牛車腎気丸も本発表で触れました通り、神経障害の発現や進行を抑えるものではなく、神経痛の緩和作用を持つようですので、その対症療法的な緩和作用が神経障害の増悪をマスクしてしまう可能性があるため、漫然と使用するのはあまりよろしくないと考えております。一方で、エビデンスは十分ではないながらも、神経保護の可能性があり毒性が少ないビタミンB12製剤や本発表で取り上げたアミノ酸製剤などを使用することに大きな問題はないかと思われます。さらに、タキサン系であれば、投与時にきつめの手袋やクライオセラピーで血流を減少させるような薬物療法以外の介入も可能かと思われます。
現時点で、具体的な薬物治療を提案できるほどのエビデンスが構築できていない状況ですが、近い将来使用できる薬剤が増えるよう、基礎研究・臨床研究双方から取り組みを進めていく所存です。今後ともご意見よろしくお願いいたします。
シンポジウム7 S7-1
平山武司先生へのご質問
【ご質問】
今まで肝抽出率の考え方がいまいちピンときていなかったのですが、今回の講演を聞いてやっと理解できた気がします。
講演内容の確認となってしまうのですが、肝機能低下時の経口投与による初回通過効果の考え方は、初回通過効果は腸管吸収され肝臓を経由し血液循環に入っていくので、EHがどのような値であろうと薬剤の消失には肝消失能のみが寄与するため、肝機能低下時にクリアランスが下がりバイオアベイラビリティが上昇し血中濃度が上昇する という考えでよろしいでしょうか?
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。先生の仰る通り、いずれの薬剤も肝機能低下患者への経口投与時は、バイオアベイビリティ(F)が上昇する可能性があります。
すなわち、Fが小さい薬物(クリアランスが大きい:血流速度依存型)ほど、その影響が大きくなるという、静脈内投与時とは逆転する可能性があります。
(作用強度は薬物①F=20%が40%になると2倍、②F=80%が100%になると1.25倍)
シンポジウム7 S7-3
笠原庸子先生へのご質問
【ご質問】
メサドンが服薬困難になり1日一回にまとめて服薬することも可能という文献を読んだことがありますが実際に一回服薬は可能でしょうか?
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。実際、メサドンの効果の印象が良い方であれば、服用可能な時に用法を変更し、1日2回や1日1回で継続したケースはあります。その際、用量につきましては1回量の増量はしておりません。それでもある程度コントロールは良好でした。1回量の増量が必要かどうかは今後の課題になります。用法(服用回数)変更後の状況を確認し、タイトレーションを検討された方がよいかもしれません。
シンポジウム7 S7-3
笠原庸子先生へのご質問
【ご質問】
メサドンが中止となった場合、①経口可能な時は先行の経口オピオイドにもどす場合のほかに、ほかの経口オピオイドに変更してみることもあるのでしょうか②経口不可となった場合は、先行オピオイドの注射薬に変更することが多いのでしょうか。または他の注射薬に変更することもありますか
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。①につきましては、先行の経口オピオイドに対する患者さんの思いをまず確認します。患者さんにとって効果の印象が悪かった薬剤に戻すことは医療者にとってもストレスですので、そのあたりも加味して検討します。ですので、先行オピオイド以外の経口剤を選択するケースはあります。②につきましては、注射剤選択時は、先行オピオイドの注射剤に戻すこともありますし、他剤を選択することもあります。先行オピオイドの耐性がとれている印象があれば、先行オピオイドを選択し、メサドン使用期間が短ければ他のオピオイドを選択することを検討します。もともと神経障害性疼痛が強かったケースでは、ケタミンを選択した例あります。今回の内容が先生の今後の業務の一助となれば幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いします。
シンポジウム7 S7-3
笠原庸子先生へのご質問
【ご質問】
貴重なご発表ありがとうございました。
メサペイン使用症例における内服困難時の対応について2点お伺いします。
内服困難となった場合に注射薬へスイッチングする際、メサペイン中止からどのぐらい間隔をあけて注射薬を開始することが多いのでしょうか?
換算量については先行オピオイドからメサペインに変更する場合の換算比を参考に用量を検討されているのでしょうか?
当院では2か月ほど前に初めてメサペインが導入となった患者様がおりますが、状態悪化により今後内服困難となった場合の対応をどうするか緩和ケアチーム内で検討中です。お忙しいところ恐縮ですが、ご教授いただけると幸いです。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。まず、注射剤へのスイッチングですが、明確な基準は設けておりません。内服困難となった背景にもよりますが、看取りが近い段階であれば、レスキューだけもしくはセデーションで対応出来るかもしれません。まだ時間があるケースであれば中止前数日間のメサドンの服用量及びレスキュー使用状況やメサドン導入前の先行オピオイドの用量を参考に用量を設定し、中止24時間後以降の開始を検討しました。メサドンは血中消失半減期が長いことを加味しての判断ですが、レスキューがいつでも使用できるよう準備しておくことは必須です。レスキューの頻度が高ければ前倒しして持続投与を開始しています。ですので、換算比(用量)につきましてもケースバイケースです。メサドン服用期間が長期だった際は、等価換算の半量程度から始めたこともあります。メサドンの服用期間も参考にされた方がよいかと思われます。先行オピオイドの耐性がなくなったと判断された場合は等価換算量より少ない設定の方が安全だと思います。過量投与などの不安があるようでしたら、レスキュー対応できるよう注射剤の準備をしておき、中止後の経過をみて疼痛の訴えがあった場合にレスキューを施行し、使用頻度などから用量を設定し、持続投与を開始することもしました。内服困難時の経管投与は可能だと思いますし、実際効果はあったと思います。ケースバイケースで明確な回答ができず申し訳ありません。今回の発表が先生の今後の業務の一助となれば幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いします。
シンポジウム7 S7-3
笠原庸子先生へのご質問
【ご質問】
平素より大変お世話になっております。臨床に沿ったメサドン使用の御経験についてのご講演、ありがとうございました。メサドンからの中止、スイッチングについてお伺いします。半減期が長く個人差も大きいメサドン錠をオピオイド注射などへ切り替える際、どの程度の間隔(時間)を空けてオピオイド注射を開始すべきか、悩むところです。先生が目安とされております、切り替え時の間隔や対処方法などございましたら、ご教授頂けないでしょうか。また、先生のスライドにもありました、病状に応じては全面中止とは、オピオイドの全面中止のことでしょうか(予後数時間~数日の看取りの段階にて)。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。スイッチングについてですが、明確な基準は設けておりません。中止前数日間のメサドンの服用量及びレスキュー使用状況やメサドン導入前の先行オピオイドの用量を参考に用量を設定し、中止24時間後以降の開始を検討しました。メサドンは血中消失半減期が長いことを加味しての判断ですが、レスキューがいつでも使用できるよう準備しておくことは必須です。レスキューの頻度が高ければ前倒しして持続投与を開始しています。用量につきましては、メサドンの服用期間が長期であったケースでは、等価換算の半量程度から始めたこともあります。用量設定はメサドンの使用期間も参考にされた方がよいかと思います。先行オピオイドの耐性がなくなったと判断された場合は等価換算量より少ない設定の方が安全かもしれません。過量投与などの不安があるようでしたら、レスキュー対応できるよう注射剤の準備をしておき、中止後の経過をみて疼痛の訴えがあった場合にレスキューを施行し、その頻度をもとに用量設定を行い、持続投与を開始することもしました。症状に応じた全面中止についてですが、看取りが近い段階であれば、オピオイドの全面中止を行い、セデーションのみで対応したケースもありますが、レスキューは準備しておりました。ケースバイケースで明確な回答ができず申し訳ありません。今回の内容が先生の今後の業務の一助となれば幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いします。
シンポジウム7 S7-3
笠原庸子先生へのご質問
【ご質問】
メサドンの使用に関してレスキューとしての服薬は現在のところないとおっしゃられていましたが、レスキュー薬を提案する際には実際にはどのように内容で処方医などに提案されてますでしょうか?
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。レスキュー薬につきましては、先行オピオイドの患者さんの印象も参考に提案しています。先行オピオイドの印象がそんなに悪くなければあえて変更はしません。先行オピオイドの効果の印象が悪く、レスキューの頻度も多く、効果の実感が得られていないようであれば他のオピオイドに変更しました。その際はレスキューのタイトレーションも必要になるかと思います。また、変更後のアセスメントも必要かと思います。
シンポジウム7 S7-5
内藤隆文先生へのご質問
【ご質問】
実際の遺伝子多型と臨床効果を立証するご研究、たいへん感銘を受けました。薬剤師としての視点で、実臨床に活かすことが可能な知見で興味深く拝聴させていただきました。
今回のご発表にて、トラマドールの遺伝子多型でIM、PMについての考え方をお教えください。IL-6に関しての結果をご提示いただき参考になりました。血中濃度に関しては、ODTは低下、NDTは上昇する結果だったと思いますが、実際の鎮痛効果に関してはいかがでしょうか。IM、PMで効果が低下するならば、ちょうど尾形先生がご提示されたようなトラマドール⇒タペンタドールなど他のオピオイドへのスイッチングにて、同力価換算では過量になる可能性は考えられますか?また、臨床でよく使用される可能性がある2D6阻害作用をもつ抗うつ薬やセレコキシブ併用の場合はいかがでしょうか。長くなって申し訳ありませんが、先生のお考えをお聞かせいただけると幸いです。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。発表データにつきましては、Tanaka H, et al. Eur J Clin Pharmacol. 2018;74(11):1461-1469. Suzuki K, et al. Basic Clin Pharmacol Toxicol. 2021;128(3):472-481をご確認いただければ幸いです。
CYP2D6の表現型につきましては、UM(ultrarapid metabolizer )、PM(poor metabolizer )でなければ、トラマドールの臨床効果には、大きな影響はないと考えています。日本人では、UMやPMは0%に近い頻度となりますので、臨床的には重要な表現型ではありません。すなわち、日本人では、トラマドール治療において、CYP2D6の表現型を調べての個別化の必要はありません。
一方、IL-6の上昇時には、CYP3A4活性が低下しますので、結果的にCYP2D6経路の依存度が大きくなります。トラマドールの排泄において、もともとCYP3A4経路の依存度は大きく、IL-6が高値を示す患者では、血中トラマドールおよび血中ODTが上昇、血中NDTが低下するといった挙動をとります。その場合、鎮痛効果が増強するようにも見えますが、そのような患者では、がんが進行し、痛みも強い場合がほとんどです。
PMでは、ODTの生成がほとんどないため、トラマドールにより除痛効果が得られにくいと考えています(PMにはトラマドールを投与すべきではないが、その表現型は日本人ではほとんどいない)。IL-6が上昇している患者では、痛みの大きさに対してトラマドールでの除痛が困難、またはトラマドールに対する反応性が悪いため、トラマドールに対する忍容性が悪くなります。
IL-6が高値を示すトラマドール服用患者が、タペンタドール(UGT代謝)に切り替えた場合には、もともと血中トラマドールおよび血中ODTが上昇していることから、同力価換算では(過量ではなく)少ない量になってしまうことになります。しかし、これを示した臨床報告は私の知る限りはございません。
強いCYP2D6阻害作用を有する薬剤が併用された患者では、血中ODTの低下から、薬物動態学的には鎮痛効果の減弱が予想されます。
シンポジウム7 S7-5
内藤隆文先生へのご質問
【ご質問】
大変貴重なデータありがとうございました。
フェンタニルに影響をおよぼす遺伝的要因について、非常に勉強になりました。
実際に、日本人において CYP3A5*3/*3 及び ABAB1 1236CC+1236CTを持つ方は、それぞれ何%くらいなのでしょうか。
ご教授いただけるとありがたいです。
よろしくお願い申し上げます。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。発表データにつきましては、Takashina Y, et al. Drug Metab Pharmacokinet. 2012;27(4):414-421をご確認いただければ幸いです。
CYP3A5*3のアレル頻度は0.7675です(Fukuen S, et al. Pharmacogenetics 2002;12:331–4)。すなわち、CYP3A5*3/*3の頻度は59%です。我々のデータとほぼ同じ頻度であることを確認しています。
ABCB1 1236Tのアレル頻度は0.656です(Komoto C, et al. Drug Metab Pharmacokinet 2006;21(2):126-32)。すなわち、1236CC+1236CTの頻度は57%です。我々のデータとほぼ同じ頻度であることを確認しています。
シンポジウム8 S8-4
矢野琢也先生へのご質問
【ご質問】
麻薬の代行処方を行った際の処方箋上のサインやいんかんはどのようになっていますか。また、事前に患者さんへ薬剤師代行について了承を得たり、文書を交わしたりはしているのでしょうか。特にオピオイド導入時の患者。医師とのやり取りについて教えてください。
【ご回答】
当院ではほぼ9割の定期処方箋を薬剤師が代行処方しておりますが、いずれも個々の診療科と文書による契約を交わしております。麻薬についても同様に医師と契約を交わしており、麻薬処方箋上には代行処方した薬剤師が押印する箇所を決めております。主治医が手術などで承認ができない場合の運用については、「主治医および該当科の医師が手術等で対応困難な場合には緩和担当医師(松原、福原医師)で対応する」と緩和ケア病棟運用マニュアルにも明記されており、こちらの医師が承認や押印を行います。
薬剤師が薬物療法全般に対して支援を行っていることを入院計画書自体に明記しておりますので、事前の患者様への了承を個別には行っておりません。
「緩和ケア病床での薬剤師による苦痛緩和の薬物療法に関する規定」が定められており、その中に「上記に加え緩和ケア病床入院患者において薬物療法が推奨され、主治医からの許可、委託がある場合、非オピオイド鎮痛薬、オピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬、副作用対策薬および各種苦痛症状への対応薬の選択、用法用量設定、処方を行い、主治医と協議のもと患者の苦痛緩和に努める」と取り決めされています。つまりは、主治医からの許可、委託があれば、苦痛緩和に繋がる薬物療法については、そのすべてが許可されています。
当院では、常日頃から主治医と薬剤師によるスモールディスカッションを行っております。当院における昔からの風土もあって、かなり頻繁に医師から薬物治療に対する相談の電話がかかります(矢野個人では1日に少なくて40~50件程度)。現在のオピオイドや投与量でうまく疼痛コントロールができない場合には、このオピオイドにスイッチングしましょう、このタイミングでRT・ステロイドを開始しましょうと、細かく事前に相談しており、その際に主治医からの代行依頼があります。疼痛緩和だけでなく、がん化学療法における支持療法も、そのほぼ大半が薬剤師に任せられており、もちろんCDTMとしての契約もあります。その一方で、医事課など事務職には一切の処方修正権限がありません(本来は事務職に行っていただきたい返品・中止処理などにおいても)。おそらく、それだけ当院では薬剤師に対する医師からの信頼が高いのだと思います。
シンポジウム8 S8-4
矢野琢也先生へのご質問
【ご質問】
医師の代行で処方する際、別薬剤師のダブルチェックなどはしているのでしょうか?
【ご回答】
新規処方時にはダブルチェックを必ず行う取り決めとしております。
Do処方であれば、ダブルチェックは行っておりません。理由としては、当院ではすべてのオピオイド処方は前回処方から投与量変更がないかを調剤時に別の薬剤師がカルテ内容をチェックしているからです。なお、Do処方といった代行処方自体はすべての緩和病棟担当薬剤師が行えますが、新規処方のみは緩和薬物療法認定薬剤師資格者に限定しております。
シンポジウム8 S8-4
矢野琢也先生へのご質問
【ご質問】
代行入力に関して、特に麻薬などで、免許を持っていない人間が入力することは、法的に問題となることはないのでしょうか。以前別病院の薬剤師とそのようなことで話をした際、麻薬は免許の問題があるので代行入力できないという意見がありましたので、その点確認された事項等ありましたら御教示頂きたく存じます。
【ご回答】
事前に県の医政政策課に法的には問題にならないことを確認しております。大分県においても問題はないという解答が得られていると聞いておりますので、特に県が違えば医政政策課からの解答が変わるということもないと思われます。
最終的には主治医が電子カルテ上で確認および代行オーダ内容について確認・承認を行いますので問題はないという院内でのコンセンサスが得られております。
シンポジウム10 S10-2
阿久井千亜紀先生へのご質問
【ご質問】
症例の書き方で適応外使用の場合はインフォームドコンセントなどしたのかの記載が必要とお話しされていました。症例介入例でドルミカムが出ていましたが、ドルミカム注は人工呼吸器装着時、手術時の適応であったと思うのですが、いかがでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。
【ご回答】
【経過に関する記述のみ】
「睡眠薬がないと眠れず内服だけでは入眠できないため、内服は中止し、短時間型のドルミカム注のみを使用することとした」
の項に対するご質問として回答させていただきます。経過のみの記述のため、症例報告としては下記のような問題点が考えられます。

① 「・・・使用することとした。」
 ⇒ 薬剤師の提案か不明であり、文字通りだと薬剤師が投与を決定したと理解できてしまうことが問題。
この場合、薬剤師が処方提案しているのであれば、その旨および用法用量まで明記すること、少なくとも薬剤師が処方変更にどのように関与したのか具体的に明記する必要がある。

② 内服から注射剤に切り替える際に、適応がないドルミカムを安易に使用しているように解釈できてしまうことが問題。
この場合、なぜ他の内服薬の眠剤の検討などなく、注射薬を選択したか理由(投与剤形の問題)が必要。また、適応外であることを医師と情報共有(適応外の投与妥当性)している旨を明記する必要がある。適応外での使用時のICについては病院毎にルールがあると思いますので、そのルールに従っていただき、可能であれば患者へIC出来ればよいかと思います。
シンポジウム10 S10-2
阿久井千亜紀先生へのご質問
【ご質問】
・わかりやすく症例記載についてお教えいただきありがとうございました。
味覚異常にプロマックを提案する症例についてご提示いただきましたが、適応外使用の提案となりますがよろしいのでしょうか。提案として問題ないとする根拠(考え方)をお教えいただければ幸いです。

・先生が示したスライドの中で、亜鉛欠乏に対してプロマックを提案するものがありましたが、プロマックに亜鉛欠乏による味覚障害に対して添付文書上の適応に記載はありませんが、公知申請が通っている場合は適応外使用に該当しないという認識でよろしいでしょうか。
【ご回答】
プロマックの「味覚障害」に対する処方は保険審査上認められており緩和領域に限らず、広く周知されていることから、”保険適応外ではない”と解釈しております。
しかしながら、今回はその旨の記載を省いてしまい、症例報告例としては十分とは言えず申し訳ありませんでした。
"薬剤管理指導症例報告書作成のための手引き"に以下の旨を追記して会員の皆様にも周知することにいたしました。
・保険審査上認められていても、添付文書の適応症にない効果を期待して処方提案した場合は、その根拠も医師へ提示した旨を明記する。
貴重なご意見をありがとうございました。 今後とも、本学会にご協力の程、どうぞよろしくお願い申し上げます。
シンポジウム10 
試験委員会の先生方へのご質問
【ご質問】
現在私が所属している病院では緩和ケア病棟はなく、コンサルテーション型の緩和ケア科となっています。そのため緩和ケアを要する患者は複数の病棟に入院しております。
また、病棟業務は1つの病棟につき3-4名の担当者がおり、週ごとに1人病棟業務を実施し、その他はセントラル業務を実施している状況です。
その場合、症例報告に係る担当期間として複数の期間ができてしまうのですが、連続した期間を記載したほうが良いのでしょうか(4/12-16、5/10-15に病棟業務を実施していた場合、4/12-5/15とすべきか)また、介入した結果の評価など、自分が病棟担当ではない期間に訪室した場合や医師等に提案した場合、担当期間として記載すべきでしょうか。

また、入院期間が短く、外来でフォローアップした場合でも病院薬剤師の介入として認められるのでしょうか。 ご教示いただければ幸いです。
【ご回答】
【金子先生ご回答】ご質問をありがとうございます。
症例の介入した期間を記載をお願いいたします。例えば、「4/12-16」の期間中の介入であればこの期間を、「4/12-16、5/10-15」の期間中の介入であれば、4/12-5/15」の記載をお願いいたします。
また、担当期間以外の介入を記載する場合には、その期間を含めた記載をお願いいたします。また、症例につきましては、次の事項について注意をお願いいたします。
「複数薬剤師が勤務する施設において、当該患者の指導などに複数の薬剤師が対応した場合、日本緩和医療薬学会への報告書の作成は当該患者を担当した主たる薬剤師が行ってください。同一患者の症例を、同一期間の複数の薬剤師が報告することは認められません」
外来での介入であればその期間を加えて介入などに分かるように記載をお願いいたします。
シンポジウム10 
すべての先生へのご質問
【ご質問】
試験問題の出題範囲について参考書がアップされていましたが、緩和医療薬学会の問題集はかなりまえに発刊されていると思います。近々に改訂される予定はありますでしょうか。変わっているところもあると思うので、どの程度参考になるか不安です。
【ご回答】
【金子先生ご回答】ご質問をありがとうございます。現在、問題集の改訂の予定はございませんが、テキストの改訂準備をしております。
シンポジウム12 S12-1
天谷文昌先生へのご質問
【ご質問】
オピオイドのテレフォンフォローアップについてです。
保険薬局との連携に関しては、基本的には事前に体制について連携をお願いしている門前薬局との連携になるのでしょうか。
フォローアップの対象となる患者が遠方やかかりつけ薬局をもっており、フォローアップ体制を知らない薬局に処方箋を持っていく場合の対応はどのようにしているのでしょうか。
【ご回答】
現状では、事前に登録した薬局に限りフォローアップを依頼しています。患者さんのメリットを考えると提携して頂ける薬局が増えることが望ましいと思います。
シンポジウム13 S13-2
吉田貞夫先生へのご質問
【ご質問】
体重減少抑制目的でEPA製剤を開始いただいた場合、効果判定(中止or継続)は投与開始後何日目に行うのが良いのでしょうか?
【ご回答】
がん患者さんの体重減少抑制のためにEPAを内服していただく場合、アドヒアランスに支障がない限りは内服を継続していただいております。がんが進行し、食事が摂取できなくなった場合などは、その時点で終了を検討しています。
シンポジウム13 S13-3
村田尚道先生へのご質問
【ご質問】
先生のご講演を拝聴していて、「エンシュア・Hを飲むと鼻から出てくる」と言われていた在宅患者様のことを思い出しました。以前より鼻声になられているようにも感じました。数日そのことが気になっていたのですが、今日のお話から考えると咽頭期に問題があり、そのままにしておくと誤嚥の可能性が出てくると理解してよろしいでしょうか。薬局薬剤師の自分ができることは、歯科医に診ていただくようつなぐことでしょうか。よろしくお願いいたします。
【ご回答】
軟口蓋の挙上不全(鼻咽腔閉鎖不全)の症状だと推察されます。ご質問の内容からすると、後天的に生じているので、脳血管疾患の後遺症や神経筋疾患の影響と考えられます。
嚥下時に鼻腔へ上がったものが、咽頭へ落ちてくるため、嚥下後の誤嚥リスクがあります。自然に改善することはないので、歯科医や耳鼻科医と連携して訪問診療をしてもらうのが良いと思います。
シンポジウム13 S13-3
村田尚道先生へのご質問
【ご質問】
院内で嚥下委員会に所属して、主に口腔ケアに関わって仕事をしています。
血液内科の患者さんで、口腔内に腫瘍が浸潤している患者さんのケアに難渋することが増えています。
腫瘍は易出血性でもあるので、滲む程度ではありながら常に口腔内に血餅がある患者さんも珍しくありません。
口腔内の出血のケアはどうされているか、ご教示いただけましたら幸いです。
【ご回答】
易出血の場合、口腔内のケアは大変難しくなります。全体的に血餅がある場合、適宜取り除くしかないと思います。
口腔ケアの考え方としては、腫瘍以外の部位に炎症を生じさせないようにすることが基本です。歯が残っていれば、歯面(特に歯茎部や歯間部)の清掃が重要です。口腔乾燥がある場合は、口蓋や舌背面・舌下部などに痂皮として付着しやすく、除去時に粘膜損傷しやすいので適宜、保湿剤を使用して湿潤後に除去してください。
色々な方法が検索サイトで見られるので、参考にしてください
https://ganjoho.jp/data/professional/med_info/oralcavity/files/oralcavity_web.pdf
院内に歯科医師や歯科衛生士がいなければ、難しいケースは、訪問診療という形で院外の歯科医院と連携して診察してもらうのも良いと思います。
シンポジウム13 S13-4
伊藤 聡一郎先生へのご質問
【ご質問】
嚥下機能低下きたす薬剤を常用している場合、薬剤性を積極的に疑う場合をご教授頂けますと幸いです。
【ご回答】
患者ごとや、使用している薬剤によって疑うポイントは異なります。しかし例えば薬剤性パーキンソニズムなどの錐体外路障害では先行期や準備期に問題があるケースが考えられます。よって、具体的な嚥下機能障害のパターンを把握し、常用薬の薬剤性の嚥下機能低下のパターンに患者症状該当し、既往歴、発現時期などから総合的に判断する必要があると思われます。
シンポジウム14 
金子健先生へのご質問
【ご質問】
麻薬の倍散を作るお話があったかと思います。顆粒状の麻薬をすり鉢で潰すことがありますか??使う予定は今のところないのですが今後の参考のためにお願い致します
【ご回答】
ご質問をありがとうございます。原末からの倍散は調製していますが、顆粒状の麻薬を乳鉢などですり潰すことはしていません。
シンポジウム16 S16-2
川名真理子先生へのご質問
【ご質問】
ベンゾジアゼピンを入院前から服用されている高齢者で、入院前アセスメントして入院後トラゾドンやベルソムラ等に切り替えを依頼する例が多いのですが、それで不眠になる方もおられます。切り替えに関してのポイント等あれば教えてください。
【ご回答】
せん妄リスクを考慮するとベンゾジアゼピン受容体作動薬は避けたいところですが、治療上必要なケースもあるかと思います。
また、入院前と入院後では環境等が変化するため、不眠の原因が変わる可能性があります。 そのため、入院後の不眠については、改めて睡眠状況や不眠のタイプ、音や明るさなどの環境、併用薬の影響等、不眠のアセスメントをすることがポイントと考えます。そして、不眠に対する薬物療法が必要と判断した場合は、不眠の状況に応じた薬剤選択をするようにします。
シンポジウム16 S16-3
大野朋子先生へのご質問
【ご質問】
貴重なご講演ありがとうございました。在宅診療における保険加算など知識のアップデートはどのような資料を参考にするとわかりやすいでしょうか。また、在宅移行時にCADDレガシーやクーデックシリンジェクターの用意が困難な在宅医をしばしば経験しますが、特徴的な背景や問題点などがあるならばご教授いただけないでしょうか。
【ご回答】
保険などの知識のアップデートはとても難しいです。私自身もかなり苦労しています。私の場合、診療報酬に詳しい元同僚(現在、診療報酬改定などの情報発信している会社をされています)に改定ごとに資料を頂いたり、質問したりさせて頂いています。無菌調製に関しては、日科ミクロンさんの情報や在宅医療を行なっている先生方の研究会やメーリングリストを参考にしています。クリーンベンチがあれば、ニプロさんも情報を色々と下さいます。
CADDなどについてですが、医師もがんの終末期を受け入れているクリニックと認知症などを中心に診療しているクリニックに分かれているため、終末期を受け入れているクリニックが、主にCADDなどにスイッチングをすると思っています。終末期に慣れた先生でないと、私たちも不安なので、慣れている先生と組んだ方が良いと思いますが、いかがでしょうか?お答えになっていますか?ご質問ありがとうございました。同じ調剤薬局薬剤師同士、ぜひ、頑張っていかねばですね。
シンポジウム16 S16-3
大野朋子先生へのご質問
【ご質問】
①現在福島県内で病院薬剤師勤務15年、緩和認定薬剤師資格の取得を目指しており、10年後主人の実家(県内会津地方)に戻る都合で、将来的には調剤薬局で在宅医療に関われる薬剤師を目指しています。在宅を行っている薬局の就職先を決めるポイントを教えて下さい。②家庭事情により先生のワークショップを聞くことが出来ませんでした。私自身、出産と育休で、単位の継続取得が難しくなり一度断念、現在育休明けで認定取得再チャレンジ中です。可能であれば、認定の取得を一度断念し再チャレンジした経験の反省と工夫、を教えていただければ幸いです。最後に先生のご講演、大変勉強になりました。ありがとうございました。
【ご回答】
①地域差があるため、とても難しいですが、チェーン薬局か個人薬局かに大別できると思います。自由度(やりやすさ)とシステム的な充実など両者の長所短所があると思います。私は、昨年末に東京から横浜に転職しましたが、居宅の在宅をあまりやっていない、施設在宅はやっている、個人ではない薬局を選びました。無菌調製室を作ってくれる、診察同行に賛成かどうかが決めてでした。個人過ぎるとクリーンベンチの導入に奥手だったり、診察同行している間、薬局を抜ける時間がなかったり、など考えました。病院経験者は、調剤薬局では重宝されるため、頑張ってください!緩和薬物療法認定薬剤師を持っているとさらに有利だと思います。アピールポイントになります。②ワークショップもチェックして頂きありがとうございます。ぜひ、応援させてください。私の場合ですが、勉強や学会発表の準備などは、行う日と行わない日を決めるようにしています。一日に子どもと遊ぶ時間と勉強時間を作ってしまうと、遊ぶ時間が長くなってしまった、切り上げられなかった時に、焦りに繋がってしまうからです。コロナ禍を利用して、ぜひ、オンデマンドの学会に参加して、単位習得のスケジュールを立てて頂きたいと思います。ご質問ありがとうございました。
シンポジウム17 S17-4
笠原庸子先生へのご質問
【ご質問】
大変、素晴らしい取り組みをご紹介いただきありがとうございました。
もしもこの質問について、ご発表で触れられてみえたらご容赦ください。
笠原先生の取り組みは、病棟薬剤師の一環として取り組まれて見えるのか、入退院支援という業務を薬剤部内で新たに立ち上げて運用されてみえるのか、どちらでしょうか。
また他の病棟薬剤師が全員そのような取り組みをされるよう教育を行って、みえるのでしょうか。 またご教授いただければと思われます。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。本来であれば薬剤科内で取り組むべきことですが、現時点では教育の面では全く体制が構築されていないため、私の個人的な取組の紹介になります。ですので、病棟担当薬剤師(場合によっては外来対応もします)としての業務の一環です。これまで、緩和ケア領域や小児領域に関わってきたため、在宅との連携が必要となるケースが多く、必要以上にのめりこんでしまった背景があり、よいお手本とは言えないかもしれません。現在も担当病棟において、在宅支援が必要なケースが多いためMSWさんなど地域連携室の方達とも協働し支援を行っております。また、他の病棟担当者も可能な範囲内で担当病棟にて退院支援を行っております。今回の発表が先生の今後の業務の一助となれば幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いします。
シンポジウム17 
すべての先生へのご質問
【ご質問】
急性期病院緩和ケアチームの薬剤師です。
外来処方箋で出すことの出来ない薬は実際にどのように運用されていますか。
当院では硬膜外(またはクモ膜下)持続鎮痛法のアナペインやマーカイン、さらに鎮静薬のミダゾラムなどが必要なケースが時々あります。在宅診療の医師が了承して下さることもありますが、保険請求で困ることはありませんか。宜しくお願いします。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。シンポジウム演者の施設では、過去に硬膜外が必要であった患者さんは、外来にお越しいただき処置対応をしておりました。ミダゾラムやフロセミドなどを在宅で使用したい場合には、訪問診療をお願いするクリニックと保険薬局で対応をご検討いただいております。
シンポジウム18 S18-1
大石醒悟先生へのご質問
【ご質問】
β遮断薬やACEIなど予後改善薬は、いつまで続けますか。また、中止はどのようなバイタルや検査値を基にしますか。
【ご回答】
β遮断薬はACE阻害薬は有害事象が起きない限りは続けていますが、ACEIやARBでは腎機能障害が進行する場合、β遮断薬は徐脈が進行する場合、双方とも血圧低下が進行する場合や内服が困難となった場合には中止します。基本的に早期に止めるものではないという考えです。経過中に心室性不整脈や頻脈でβ遮断薬が導入されている場合には、さらに中止は先になるものと考えます。
シンポジウム18 S18-2
三宅剛司先生へのご質問
【ご質問】
心不全の在宅診療の現状についてわかりやすくご説明いただきありがとうござました。
先生の発表の中で、心不全の在宅診療での課題として、オピオイドや強心薬等での点滴ポンプの使用に関してあげられていました。特に強心薬に関してですが、ドブタミン等の注射薬は在宅医療において院外処方ができないお薬であり、シリンジポンプ加算の対象になっていないと思いますが、実際在宅でシリンジポンプで強心薬を投与したい症例にはどのように対応されていますでしょうか。具体的には、患者の自費になるのか、院内処方ですとどなたが注射薬をシリンジにミキシングしているのか、強心薬の予備のシリンジは準備しているか(ポンプの詰まりを考慮して)等についても教えていただけると幸いです。また、心不全に対するオピオイドの使用に関しても、院外処方が切れないと思いますので、実際どのように対応されているかに関しても教えていただけると幸いです。
質問が長くなりまして申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
【ご回答】
高カロリー輸液については、在宅中心静脈栄養法指導管理料の中の注入ポンプ加算がありますが、ドブタミンの使用では該当する管理料はなく、通常のカフティポンプなどは使用できないため、当院ではシュアフューザーポンプなどを使用して週1-2回の更新で対応しています。その場合、ポンプ料は持ち出しで、精密持続静脈点滴加算のみとなります。またルート閉塞のリスクを回避するため、PICCカテーテルなどの使用を考慮します。心不全単独の症例では、オピオイド注射薬の持続点滴等の導入は難しく、まずは少量内服薬で効果を確認します。また終末期では、厳密な量の調整は困難ですが、ミダゾラムの持続皮下注などの使用も考慮します。
シンポジウム18 S18-3
岡本禎晃先生へのご質問
【ご質問】
ハロペリドールは、重症心不全患者には禁忌となっていますが、その辺の情報提供や判断はどうされていますか?
【ご回答】
心不全患者さんにはハロペリドールは使用しません。基本的にドルミカムかモルヒネでコントロールします。せん妄の場合はドルミカムで鎮静します。
シンポジウム18 
岡本禎晃先生・櫻下弘志先生へのご質問
【ご質問】
デキサメタゾンやベタメタゾンは、心不全患者の倦怠感や食思不振に対して試してみる価値はあるでしょうか。
デキサメタゾンやベタメタゾンは、鉱質コルチコイド作用が(ほとんど)ないため、心不全症状を悪化させることはないと考えても良いでしょうか。
【ご回答】
【岡本先生ご回答】
緩和ケア診療加算が算定できる末期の患者さんには使用しません。おそらく効果も無いと思います。もう少し早い段階での使用は可能だと思いますが、そうすると、中止のタイミングが難しくなると思います。
【櫻下先生ご回答】
デキサメタゾンやベタメタゾンは、心不全患者の倦怠感や食思不振に対して試してみた経験はありません。心不全に影響はないとは考えません。
シンポジウム18 
すべての先生へのご質問
【ご質問】
疼痛と異なり、呼吸苦で使用するモルヒネ注の用量の上限は決めているでしょうか。決めていない場合は、ミダゾラムを使用して鎮静する際の目安などもよろしくお願いします。
【ご回答】
【大石先生ご回答】
当院では上限は当初は30㎎としていましたが、実際には20mgを超えて処方したことはありません。10㎎で奏功しなければ増量しても奏功しない印象です。鎮静の適応は呼吸苦であることは少なく、いてもたってもいられないというような低心拍出に伴うと考えられる症状であることが多いですが、モルヒネ10㎎でもさまざまな苦痛(この時点になると身体的苦痛はありますが、呼吸苦単独かどうか、倦怠感かどうかも分からない)が緩和されない場合に妥当性を判断して、間欠的にミダゾラムを使用することがあります。
【岡本先生ご回答】
5mg/日から開始して10mgから多くても20mgくらいまでです。
【櫻下先生ご回答】
心不全においてもがん領域に準じて5~10 mg/日、もしくはさらに少量から持続静注または皮下注で導入されている場合が多い現状です。末期心不全症例は腎機能が低下していることが多く、少量から開始し、徐々に増量しながら投与していくのがポイントと考えます。
一般演題 O-45
高橋智恵子先生へのご質問
【ご質問】
大変興味深い内容で、勉強になりました。
・薬物乱用に対する考えについて講義後にどのように変化したかアンケート結果があれば教えていただきたいと思います。
・薬物乱用に対する考えで「使用は個人の自由」の項目について、「使用は個人の自由」を選択した回答者は、根本の考えとして「絶対使うべきではない」もしくは「1回ぐらい構わない」のどちらが多いのでしょうか?
・上記の質問に関連します。「使用は個人の自由」と回答した方の、麻薬依存の危険性の理解度やアヘン戦争、国内外の薬物乱用の取り組みなどの講義の理解度や満足度の関連性がわかれば教えていただきたいと思います(興味ないとの関連性があるのかなど)。
以上、よろしくお願いいたします。
【ご回答】
・ご質問ありがとうございます。薬物乱用防止教室の講義前、講義後のアンケートですが、学校の協力を得て、回答を得ております。学校の都合でアンケートは朝の会に「講義前」を配布し回収、講義終了後に「講義後」を配布し別々に回収されておりましたので、個人における意識変容の確認が難しい状態でした。アンケート作成の趣旨としては、ご指摘の通り講義前後の講義による変化の比較を考えておりましたが、発表の通りの集計方法となっております。アンケート取得方法については今後の学校との連携も課題であると考えています。
・“「薬物乱用」に対する考え”は、講義前の質問の項目です。
1;薬物はどのようなり理由であれ、ぜったいに使うべきではない
2;1回ぐらいなら心や体への害はないので、使っても構わない
3;他人に迷惑をかけないので、使うかどうかは個人の自由
4;わからない
5;その他
の5つの選択肢があり、このうちから1つを選択しますので「使うかどうかは個人の自由」を選択されると他は選ばれていません。2019年でみますと、2;「1回ぐらいなら構わない」を選択したのは0.8%ですが、3;「個人の自由」については5;その他の理由で“個人の自由”と記入したものを積極的意見として集計しますと3.4%で「1回ぐらいなら構わない」よりも「個人の自由」と考える生徒の方が多いといえます。「個人の自由」と回答した中では、麻薬の「危険性を理解している」「まあまあ理解できている」と答えた割合は87.5%であり、講義前の段階では薬物乱用に関して正しい知識を持っているのか懸念されました。また、86%の生徒は「ぜったいに使うべきではない」と考えています。