市民公開講座第3部
がんになっても安心して暮らせる街を目指して
愛媛大学医学部 医療福祉支援センター長
コーディネーター:櫃本 真聿()
医療の進歩と共に、人間の生と死は日常の生活から病院内に隔離されました。個々人への診断・治療を中心と した医療の進歩は、医療をますます生活の資源から切り離していく危険性をはらんでいます。そもそも患者の不安や不満は、医療者の狙いと患者側の求める生活ニーズが十分確認されず共有できていない“認識のズレ”から起きています。確かに急性期病院は“病気と闘う場”でもありますが、医療を生活から切り離し、その人らしい生き方や死に方の支援をおろそかにしていては、膨大な医療費をつぎ込むことへの理解は得られません。日常生活から切り離された診断・治療中心の医療から脱却し、「健康を守る社会基盤の再構築」を目的に、たとえ急性期医療であっても、住民の生活を支える地域資源として取り戻すパラダイムシフトが不可欠です。信頼関係を再構築するために、生活に視点を置いたコミュニケーションの促進を、医療者の本来の役割として期待したいと思います。
NPO 法人愛媛がんサポートおれんじの会 理事長
コーディネーター:松本 陽子(まつもと ようこ)
「どこに住んでいてもどんな病期でも、自分で納得し選択した医療を受けたい。そして自分らしく暮らしたい」ー多くのがん患者・家族の願いです。しかし、願いからはかけ離れた現実があります。
自宅へ戻って小学生の息子に食事を作ってやりたいと願った40代の女性。自宅近くにはがん患者を支える医療資源が乏しく、最後までその思いは叶えられませんでした。
治療が一段落し退院した80代の女性。近医の紹介もなく外来は月に一度、その間高齢のご夫婦は不安と孤独の中で耐えるしかありませんでした。
患者の病気だけを診てきた医療から、患者・家族の生活をみる医療への転換こそが、連携の最も重要なポイントではないでしょうか。
各地での様々な取り組みを紹介し、病気になっても安心して暮らせる街づくりへのヒントを探りたいと思います。