教育講演4
知っておきたいリンパ浮腫の治療とケア
学校法人 後藤学園附属
リンパ浮腫研究所
佐藤 佳代子(さとう かよこ)
【はじめに】リンパ浮腫は、リンパ管系の先天的形成不全やリンパ節郭清を伴うがん術後などにより発症する。早
期からの治療やケア、生活指導は、患者の日常生活に大きく影響を与える。近年、リンパ浮腫のケアを求める患者の声が高まり、多くの医療機関においてリンパ浮腫治療への取り組みがなされている。
【リンパ浮腫とは】リンパ浮腫は、時間の経過とともに増強するリンパうっ滞や皮膚肥厚・線維化のため四肢の周径
に左右差が生じ、重圧感、深部痛、だるさ、疲れやすさ等を伴う。さらに患肢に過剰な組織液がうっ滞するため免疫力が低下し、過度の身体疲労、創傷、真菌感染等により、悪寒、発赤、発熱を伴う「蜂窩織炎」を合併しやすい。発症時期には個人差があり、術後直後のみならず、数年後、十数年後に発症する場合もあり、長期にわたり適切な治療を受けず放置すると象皮病にまで進む可能性がある。
【複合的理学療法 治療の概要について】代表的な保存的リンパ浮腫治療である「複合的理学療法」では、スキンケア・医療徒手リンパドレナージ・弾性包帯/弾性スリーブ・ストッキングによる圧迫療法・排液果を促す運動療法を基本内容とする。治療開始の際に医師の診察を受け、適応禁忌を明確にし、患者の基礎疾患、現在の皮膚状態をふまえ、解剖学的なリンパ管の走行を考慮し、安全に施術をすすめる。治療目的は、患肢に過剰に貯留した組織液やリンパを誘導し、浮腫の軽減、体液環境および皮膚状態を改善させることである。運動制限が改善され、ADL・QOL が向上につながり、精神的苦痛の緩和が期待できる。より充実したセルフケアを実施できるよう指導することも重要である。
【平成20年/22年度診療報酬改定 リンパ浮腫の保険適用実現】@リンパ浮腫指導管理料 診療報酬の対象として「リンパ浮腫指導管理100点」が新設された。リンパ浮腫を発症する可能性のある手術を受けた患者に対して、リンパ浮腫の治療・指導の経験を有する医師又は医師の指示に基づき看護師・理学療法士が、手術前後にリンパ浮腫に対する適切な指導を個別に実施した場合に認められる。平成22年度より当該内容に関し、退院後の外来による指導についても申請が可能になった(1 回)。
A四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣などに係る療養費の支給 弾性着衣(弾性スリーブ・ストッキング等)または弾性包帯について、年に2回計4着まで(1 回の購入時2着まで)を療養費での支給が認められる。