特別講演4
知っておきたい
がん患者必携とがん情報サービス
―情報提供と相談支援の取り組み―
国立がん研究センター
がん対策情報センターがん情報・統計部
渡邊 清高(わたなべ きよたか)
【背景】がん対策推進基本計画において取り組むべく施策として、「がんに関する情報を掲載したパンフレットやがん患者が必要な情報を取りまとめた『患者必携』を作成し、がん診療連携拠点病院等がん診療を行っている医療機関に提供していく」ことがあげられ、患者視点での情報提供と相談支援の取り組みの重要性が指摘されている。国立がん研究センターがん対策情報センターでは、「患者必携」を製作し、活用されるための検討を進めている。がん医療における慢性疾患患者向けの情報提供と普及に向けた取り組みをご紹介したい。
【これまでの進捗】本プロジェクトの目指すところは、診療ガイドライン等の信頼できる情報を収集し、わかりやすく記述することで患者の主体的な意思決定プロセスを支え、療養支援に資する情報や体験談を盛り込むことで、がんに向き合い、共に生きるガイドの機会を提供することである。製作に当たっては患者・家族・市民の視点から当センターが発信する情報へ意見を寄せていただく、患者・市民パネルの協力を得た。試作版をがん情報サービス(http://ganjoho.jp/)に公開しアンケートを実施、同パネルによる検討会や試験配布で得られた知見などを踏まえ、2010年6月に完成版PDFを公開し普及スキームの検討を行っている。治療や療養生活に関する情報を掲載した冊子「がんになったら手にとるガイド」「各種がんの療養情報」と、患者自身の気づき、疑問や理解したことを書き込む手帳「わたしの療養手帳」から構成され、手帳はバインダーに綴じ込んで受診の際に携帯し、利用することを想定している。
【連携への目線】「ガイド」には「療養生活を支える仕組みを知る」として、総論的ながん診療の連携、療養施設
や助成制度、支援の仕組みの解説とともに、拠点病院の相談支援センターをはじめ問いあわせ窓口に相談できること、連携を円滑で確実なものにするために地域連携パスが運用されることについて概説している。連携パス適応の際には、ガイドを利用した説明とともに、バインダーに共同診療計画書を綴じ込み、「療養手帳」や各地域の医療機関や相談窓口・独自の支援制度などを取りまとめた「地域の療養情報(4 県で試作)」などと組み合わせて利用することで、患者と医療者の対話ツールとして活用され、切れ目のない療養生活を実現するためのプラットフォームとなることを目指している。