パネルディスカッション4
パスを通じての人材育成
熊本済生会病院 院長、岩手県立中部病院 院長、
済生会熊本病院 事務次長兼人事室長
オーガナイザー:副島 秀久(そえじま ひでひさ)
座長:北村道彦(きたむら みちひこ)
甲斐聖人(かい まさと)
本邦でのクリニカルパスの導入は1990年代後半からはじまり、当初は患者に対するインフォームド・コンセントを目的にコミュニケーションツールとして導入が進められ、その後、医療を標準化し、科学的、合理的に行うためのマネジメントツールへと進化した。そして、この進化を支えたものがチーム医療である。従来医師の裁量権により行われてきた医療に対して、看護師をはじめとする他の医療専門職が、エビデンスをもとに医療の行程やタスク、アウトカムについて議論し、パスに反映させてきた経緯がある。それまでの仕事のスタイル、考え方が変わり、多職種が医療に関わりあい、医療の標準化や医療の質の向上に寄与する場面が出てきた。例えば、看護師であれば身体的・精神的ケアに関すること、薬剤師であれば薬剤の適正使用に関すること、検査技師であれば検査内容や頻度、事務員であれば疾患別の原価計算やベンチマークなどである。
多職種でパス活動を推進するには、まず組織文化を改革しようとするリーダーが必要である。医療現場においては医師がリーダーであることに間違いはなく、パス活動を通じて看護師などの他職種と良好な人間関係を築き、チーム医療の醸成に影響を与え、リーダーシップ力が涵養されれば、その組織文化までも変えていくことが可能となる。また、看護師の場合、パス活動を通じて標準的な看護や記録の体系、医療の質を学び、感染防止や褥瘡対策など組織横断的な活動の中で中核的な役割を担うことも可能である。どの職種においてもそれぞれの専門知識は勿論のこと、コミュニケーション力、情報分析力、プレゼンテーション力等のスキルも必要であり、パス活動を通して生み出される教育効果は大きい。
パスが日本で普及し始めて十数年が経過するが、パス活動を通じて仕事の考え方、やり方が大きく変化し、人材育成の方法も大きく変化してきたと言える。これまでにどのような人材が育ったか、また、どのような課題を抱えているか、今後の展望も含めて今回議論してみたい。
以上