教育セミナー5 【アドバンスコース2】
バリアンス分析
−あと一歩だけ、前に進もう!−
聖隷三方原病院 泌尿器科
永江 浩史(ながえ ひろし)
クリニカルパスが一定期間運用された後に記録・蓄積されたバリアンスを収集・分析し、改訂を加え以後の患者ケアに反映させる作業は、パスの生命線です。とても良いことなのに分析担当者の時間的・心理的な疲弊感は非常に大きいと感じることが数多くあります。その負担感を軽減し分析を活性化するには、バリアンス分析のメリットを皆に理解を深めてもらうこと、適正かつ効率的な分析、分析結果の十分な活用、等が必要です。
@ 分析のメリット(ありがたさ):一つは、ケア内容への自信と業務の効率化です。エビデンス導入やベンチマーキングにより術後の創管理などは大きく簡略化しました。ガーゼ処置の中止・シャワー浴の早期許可等で患者さんの生活復帰は早まり、同時に医師も看護師も処置や保清ケアに投じていた労力を他の仕事に振り向けることができるようになりました。最初は「本当にこれで創は大丈夫なの?」と疑問視されていた現場でも、バリアンス分析によりそんな不安感が払拭され、過去の煩雑な業務が思い出話に変わったという人も多いでしょう。そして、それがさらなるケア改善(パス改訂)に対する新たな動機を生み、PDCA サイクルを回し続けることになります。また一方では、手術パスのバリアンス分析結果が、同手術を考える患者さんへの医療情報として説得力を増す点も、外来診療の大きな武器になっています。
A 適正かつ効率的な収集/分析:センチネル、ゲートウェイ、オールバリアンスの各方式から、所属部署のケアレベル向上に合った収集法を選びます。これらは本来パスのアウトカム設定時に将来の分析計画として準備しておくのが本筋です。分析の実際(結果の解釈/改善策の提案)に到るまでは、本編で概説いたします。
B 分析結果の活用:得られた分析結果は、自チーム内、院内パス大会、他施設とのベンチマーキングなど多くの場面に活用されることが、分析担当者の苦労への報いとなります。同時に、チーム内では記録方法の反省・修正に反映させることも重要です。粗雑なバリアンス記録ほど収集分析中に担当者がつらい思いをさせられるものはないですから。
バリアンス分析を経て次なる世界に仲間を連れていくのには、勇気と情熱が要りますね。
“誰も知らない世界へ向かっていく勇気のことを“ミライ”っていうらしい”という詩もあります。全国のパス担当の皆さん、バリアンス分析で、“あと一歩だけ、前に進もう!”