第44回日本骨折治療学会
会長挨拶
第44回日本骨折治療学会
会長 佐藤 徹
独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター 整形外科 診療部長
 今回、岡山において29年ぶりに日本骨折治療学会を開催させていただくことになりました。私にとっては光栄の至りであり、同時に身の引き締まる思いであります。岡山大学整形外科から現在の岡山医療センターに勤務させていただく間、諸先輩方から骨折治療に関して、数え切れない薫陶を受けてまいりました。多くは手術手技に関して、またあるときは様々な治療法の選択に関して、 “名人芸”と呼ばれるテクニックをお持ちの先輩方の手術につかせていただき、学んだことは、「エキスパートと呼ばれる人は賢い選択をする」ということでありました。患者および軟部組織を含めた骨折状況を的確に判断し、自分の技量と得意な手技を考慮して、一番適切な治療を選択することが重要ではありますが、実行するのはなかなか容易ではありません。
 本邦における骨折治療の特徴は、1つの治療法で全ての骨折型に対応しようとする傾向が強いということであると考えます。手技を極めて治療成績の向上を目指すことは、その分野では名人芸を生み出すこととなりますが、このような技量は広く長く継承されることは困難です。比較的若い先生が骨折治療を担当することが多い本邦において、最も重要なことは、通常の技量を持った整形外科医が安全かつ合併症を生じることなく、適切な治療法を選択、実行することであると考えます。このためには1つの骨折に対して様々な治療法に精通し、最も適切な固定法を選択する判断力を身につける必要があり、今回、様々な治療法が錯綜する骨折を中心に、最も適切な治療法の選択について議論を重ね、80%の整形外科医が安全に施行可能な手術手技の選択と確立を目指すために「伝統と革新を紡ぐ」をメインテーマとしました。
 また、若手医師で作るジョインの会では成果発表を、熟練の先生には手術手技のtips & tricksをビデオセッションで詳細していただく予定です。各骨折に対する内固定法の選択についてはdebate で熱い議論をしていただきます。

 骨盤輪・寛骨臼骨折研究会を学会翌日に行っておりましたが、今回は海外講師を含めてmaster courseを開催いたします。世界の第一人者に最先端治療、複雑な損傷の治療法など興味深い内容となっております。奮ってご参加いただければ幸いです。  


平成29年8月19日