第91回日本産業衛生学会
ご挨拶
第91回日本産業衛生学会
企画運営委員長
熊本大学大学院生命科学研究部 公衆衛生学分野
 加藤 貴彦
 2018年5月16日(水)から19日(土)にかけて、第91回日本産業衛生学会を熊本市で開催させていただくことになりました。日本産業衛生学会の会員の皆さまに、企画運営委員長として一言ご挨拶申し上げます。

 第91回総会のメインテーマは「悠(はるか)なる産業保健 -人と科学技術の連鎖―」です。人は、生活のなかで様々な生産活動を行ってきました。18世紀の産業革命は、道具の時代から機械の時代へと世の中を変遷させ、工業生産を飛躍的に増加させました。しかし、それは一方で、有害化学物質に曝露される労働者が飛躍的に増加することとなり、様々な健康障害や公害問題が発生しました。また、社会システムにおいては労働者と資本家が分離することによって、人々の経済格差を広げました。1990年代にはいると、インターネットによる情報技術革新の幕開けとなり、仕事の遂行には、多様かつ大量の情報処理能力が要求され、人の心理的な負担が増大していきました。今はまさに、このインターネット社会革命が地球全体をおおっている時代といえるでしょう。

 近年の科学技術は目をみはるほどのスピードで進化を遂げています。未来学者のレイ・カーツワイルは、コンピューターが全人類の知性を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」(Singularity)が2045年に到来すると予測しています。「人工知能」(Artificial Intelligence, AI )やロボットのような科学技術の進歩によって、我々の働き方は大きく変化する可能性があります。人の体と頭脳、機械が融合し、壮大な知的共同体が出現するという予測もあり、働くということの意味を根本的に変えてしまう未来があるかもしれません。翻ってみると、科学技術は様々な功罪を含みながら、社会システムや我々の働き方へ大きな影響を与えてきました。例えばAIやロボットによる代替化は、労働移動や失業を引き起こす可能性がある一方、障害を抱えた人々に対しては、公平に働く機会への扉を開いてくれる可能性もあります。本学会総会では、人と科学技術の連鎖について、その軌跡と未来について活発な議論を深めていただきたいと存じます。

 2016年の熊本地震から1年が過ぎましたが、現在もなお、我々は復旧から復興に向け県民一体となって頑張っています。会場となります市民会館シアーズホーム夢ホール、熊本市国際交流会館、くまもと県民交流会館パレア、鶴屋ホールは、熊本城近くの中心市街地にあります。周辺には飲食店やホテルも多く、大変便利でにぎやかな場所です。参加者の皆さまには大いに楽しんでいただけるものと思います。

 最後になりますが、多くの会員の皆さまが熊本にお越し下さり、本学会総会に積極的にご参加くださいますよう心よりお待ちしております。