会長挨拶
第7回日本経カテーテル心臓弁治療学会学術集会 JTVT 2016 会長
内科系
外科系
小川久雄
国立循環器病研究センター
理事長
小林順二郎
国立循環器病研究センター
副院長

 人口の高齢化とともに心臓疾患とりわけ動脈硬化症の進行による疾患の増加が顕著になってきました。冠動脈疾患に対しては冠動脈インターベンションや冠動脈バイパス術の進歩でほぼ解決してきました。ただ、今後の課題として増加している大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症などに対する対策が必要です。これまで治療困難あるいは不可能であった心血管疾患へ、新しい概念による治療の開発導入が進んでいます。その中で、特に高齢者大動脈弁狭窄症への経カテーテル大動脈弁植込み術(TAVI: Transcatheter Aortic Valve Implantation)は2002年よりヨーロッパで臨床応用が始まり,またたく間に全世界に広まりました。

 弁膜症に対するカテーテル治療の歴史を振り返ってみますと、経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(PTMC: Percutaneous transvenous Mitral Commissurotomy)は1984年に井上らによって初めて臨床応用されました。また大動脈弁狭窄症に対しては、経皮的バルーン大動脈弁切開術(BAV: Percutaneous Balloon Aortic Valvotomy)も1986年に報告されまして2000年代に入りTAVIに移行していきました。さらに手術困難な僧帽弁閉鎖不全症に対してもMitraClipデバイスがFDAに承認取得され2013年10月~2014年8月の期間にMitraClipを受けた患者564名のデータが評価され良好な成績が得られています。

 わが国におけるTAVIは2009年12月の大阪大学での第一例に始まり、2013年10月からの保険収載により急速に普及し既に2000例を超えています。しかも30日死亡率も1%台を維持しており海外に比較して非常に良好な成績を維持しています。その成績に貢献しているのが、国内での安全で確実な治療普及の道筋を示すため日本循環器学会、日本胸部学会、日本心臓血管外科学会、日本心血管インターベンション治療学会の4学会の代表、ならびに厚生労働省とPMDAからオブザーバーを迎えて組織された経カテーテル大動脈弁置換術関連学会協議会であると考えています。

 TAVIの新しい知識の導入と自己の治療技術向上を目的に2010年7月に第1回Transcathetr Cardiovascular Therapy Symposium (TCVT)が開催され、大阪大学の澤芳樹教授が会長を務められました。TCVTは年1回のプログラムで開催され、第3回は東京にて榊原記念病院の高山守正先生が会長を務められました。2014年よりJapan Transcatheter Valve Therapies (JTVT)へ改称されて開催、そしてハートチームによる治療が根幹のTAVIより内科系・外科系の両科によるJTVT 2015に榊原記念病院の循環器内科の高山守正先生と心臓血管外科の高梨秀一郎先生が会長で開かれました。また、本組織は平成27年5月に社団法人を取得し、「日本経カテーテル心臓弁治療学会」として新たに出発することになりました。

 さらに2015年9月7日に国立循環器病研究センターにおいて国内第一例目のMitraClipが行われ成功したのに続き、10月2日に2例目も成功しております。いずれも高齢で手術ができない患者さんでした。今後、治験が進んでいくと思われます。

 JTVT2016は、2016年8月11日、山の日(祝日)に大阪国際会議場にて開催いたします。TAVIに加えて、経カテーテル僧帽弁治療も中心の話題のひとつとなる事と思います。経カテーテル的心臓弁治療の臨床現場では、チーム医療は不可欠です。本学会では各施設が実際に行っている取組みや工夫を様々な視点からご発表いただき、また最先端の講演から多くの事を学んでいただき、今後の治療の発展に役立てていただきたく存じます。

平成27年10月吉日
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