ご挨拶
第50回
日本アルコール・薬物医学会

会長 西口 修平

兵庫医科大学 内科学肝胆膵科 教授

第37回
日本アルコール関連問題学会

会長 堀井 茂男

公益財団法人慈圭会 慈圭病院 院長

第27回
日本依存神経精神科学会

会長 曽良 一郎

神戸大学大学院医学研究科
精神医学分野 教授

平成27年度 アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会の開催にあたって
 第50回日本アルコール・薬物医学会、第37回日本アルコール関連問題学会、第27回日本依存神経精神科学会の合同学術総会を、平成27年(2015年)10月11日(日)~10月13日(火)に神戸国際会議場にて開催させていただきます。3学会が合同で学術総会を開催するのは平成24年の札幌大会、昨年の横浜大会に次いで3回目になります。なかでも、日本アルコール・薬物医学会は50年目の節目を迎えますので、今回は3学会が合同で、50周年記念大会として開催いたします。
 半世紀前より、アルコールによる臓器障害は内科のみならず病理学・法医学領域において盛んに検討されてきました。アルコール脱水素酵素、 MEOSやこれらの遺伝子多型と疾患の関係が次々と解明され、アセトアルデヒドにより消化器がんや乳がんのリスクが高まることも疫学研究によって証明されています。臓器障害は単なる低栄養ではなく、その代謝過程で引き起こされる細胞障害、線維化、循環障害などの多くの要因が関与しています。飽食の時代を迎え、脂質や糖代謝異常などの遺伝的素因と肝障害との関連が注目されており、アルコール摂取量に関わらず、肝障害をきたす非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が新たな問題となっています。
 一方、アルコール性臓器障害の多くは依存症を合併していますが、断酒指導は内科医には荷が重い領域です。アルコール依存症はその当事者のみならず、周囲の人にも多大な影響をもたらす社会問題でもあり、医療の枠を超えた取り組みが必要です。1963年に国立療養所久里浜病院にアルコール専門病棟が産声を上げ、自助組織、全日本断酒連盟が結成されました。その後、アルコール関連問題学会、アルコール精神医学会が設立され、アルコール依存症に対する多くの領域の専門家を交えた研究が進み、これらの活動は2013年のアルコール健康障害対策基本法の成立に繋がっています。さらに、アルコール以外のニコチン依存や他の薬物依存は社会的問題として年々重要度を増しています。これに対応するために、日本依存神経精神科学会が中心となり、研究の幅をアルコールから依存症全般に広めてきました。
 本学会では、このようなわが国のアルコール研究の歴史を振り返りつつ、次の50年への方向性を模索するために、学会のテーマを「温故知新:アルコール・薬物研究 50年の歩みと未来への展望」とさせて頂きました。今回は、温故知新をテーマに、3学会が合同してアルコール研究の全般を網羅する数多くの企画を用意させていただきました。基礎医学、臨床医学、心理学、精神保健、リハビリテーション、地域や自助グループの支援者など多くの領域の専門家が一堂に会して、活発な討議を行っていただきたいと思います。
 神戸は、平安時代から大輪田泊・福原の都として栄えていました。歴史ある町、神戸で開催される50周年記念合同学術総会に是非ご参加を賜りたいと存じます。本学会にご参加いただくついでに、神戸ビーフや中華料理などもご堪能いただき、神戸の良さを満喫いただければ幸いです。


平成27年4月吉日