日本産業衛生学会 中国地方会
地方会ニュース 第32号(平成31年1月)
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第4次産業革命と産業保健

日本産業衛生学会中国地方会長
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
公衆衛生学分野
荻野景規
 私、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科公衆衛生学分野の荻野景規は、本年度3月31日で大学を退任し、金沢大学11年と岡山大学13年の24年間の教授生活に終止符を打つ。しかし、今後は産業医としてますます深く産業医学と係わるので、再度地方会長をお引き受けした。
 昨年度、大手銀行の大規模なAI導入と従業員大削減は、かつては堅実な象徴的職業だった日本の金融関係者の行く末を、すなわちAIに仕事を奪われる労働者が路頭に迷う姿を、まざまざとみせつけられて、日本の労働者に衝撃が走った。様々な分野でAIやロボットが人間の雇用に置き換わろうとしている。AI化が進めばすすむほど、いったい労働者は生き延びられるのであろうか? 人類史上、いつの時代も進化は止められないし、とめるべきではない。一部の先進国でおきたような雇用を守るためのストライキなどの愚行をおこすより、労働者側もAIやロボットによる自動化を積極的に進めたい。要は、ヒトの労働に対する価値を上げれば良いのである。そうすれば、労働時間が削減され、有給休暇や休息時間を取り易くなると心身両面の健康増進が期待される。
 現在、企業は急激に労働時間に対する制度や意識の改善、労働環境の改善・整備、非正規雇用者の処遇改善などのすみやかなる実現をもとめられている。政府主導で進められている働き方改革である。その際、産業保健に携る医療従事者はその専門知識を駆使してしっかり企業を補佐していただきたい。例えば、過重労働は過労死等防止対策推進法上「過労死」と「過労自殺」を明確に区分している。
1.業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡(過労死)
2.業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死(過労自殺)
 長時間労働、深夜勤務が関係する過労死は、わずかに減少する一方、精神的ストレスが多く関係する過労自殺と精神障害は増加傾向がある。巷で労働者が休暇中も仕事メールを確認している光景をよくみる。情報化社会は個人にまでスピードと競合とその成果を要求するので、 労働者の精神的疲労に終わりがない。だから「過労自殺」予防策は単純に「労働時間の短縮」ではない。実は「仕事上のストレス」が取り組むべき課題なのである。
 以上のような的確なアドバイスがあってこそ、「働き方改革」で企業は打つべき施策がみえてくる。
 労働者がどれだけ効率的に働いたかを示す「労働生産性」が、1970年以降日本は先進7ヵ国(G7)中ずっと最下位であり、長時間労働が改善されれば、生産性が向上するかというと、そんな単純計算にはならないが、少なくとも労働者の健康増進に役だつことには間違いない。事実、私の友人が社長をしている上場企業は、残業を減らし結果、収益がかえって上がっている。空いた時間で、より健康的社会生活が送れるようにしたいものである。
第62回中国四国合同産業衛生学会 御礼

第62回中国四国合同産業衛生学会
学会長 神田秀幸  
 去る2018年11月17-18日に島根県松江市松江テルサで開催致されました第62回中国四国合同産業衛生学会は、天候と多くの参加者に恵まれ成功裏の内に無事学会を終了することができました。多数の方に参加いただきましたことを感謝いたします。大過なく無事完遂することができましたのは、ご参加の皆様のご理解と、講座員、運営委員、実行委員の皆様方のご支援とご協力を頂きましたおかげでございます。すべての皆様に厚く御礼申し上げます。
 今学会の特徴のひとつとしまして、ポスター発表の機会を設けました。4演題の登録があり、予防医学の取組みや健康対策を産業保健の観点へ応用する示唆を与えて頂くことができました。多数の参加者による熱いディスカッションが交わされました。
 また、シンポジウムでは、経営者・人事労務担当者・産業医それぞれの立場から、働き方改革や健康経営、人材尊重、労働者の権利と責務などについてご発表頂きました。働き方改革関連法案の成立を受け、聴衆の関心が高く大変盛況でした。
 また、各部会研修会では、さまざまな今日的産業保健の課題を学習する機会として貴重な機会であったと思います。グループワークや面接演習、また地方会ならではの演者と聴衆の近い関係から率直な意見交換・現場の課題解決など、産業保健に関してより実践的な取組みで、各部会の盛り上がりを感じておりました。
 口演発表では、実践報告や事例報告なども含め、発表内容は多岐に渡っておりました。
 こうしたポスター発表・シンポジウム・部会研修会・口演発表に直接触れる機会を創ることで、特に若い先生方に、産業衛生の醍醐味・面白さを感じたり、発表をご経験いただく機会を提供できたと考えております。
 懇親会でも島根の郷土料理と、名産品の当たるビンゴゲームで盛り上がりました。限られた時間の中ではありましたが、スムーズな進行となるよう皆様方からご協力頂きましたことに御礼申し上げます。
 中四国地方各地から沢山の皆様にご参加頂き学術的な研鑽に加え、島根県の歴史と文化を楽しんで頂けたのであれば、とても喜ばしいことと存じます。神在月の出雲地方のため混み合い、宿泊・交通等で参加者の皆様ご不便をおかけしたことをお詫び申し上げます。今回、イベント会社を使用せず講座スタッフの手作りの学会運営でした。行き届かない点もあったかと思いますが、どうかご容赦頂きたくお願い申し上げます。本学会のプログラムにご協力頂いた先生方や座長の皆様に感謝するとともに、遠方よりお越しいただいた参加者の皆様、学会開催にご支援とご協力を頂いた関係者の皆様やご後援・ご協賛頂きました団体・企業の方々に深謝申し上げます。
 最後に、皆々様方の益々のご健勝とご活躍をお祈りし、御礼の言葉に代えさせて頂きます。
トピックス
ゲノム医療の歩み

伊藤 達男
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 公衆衛生学
 次世代シークエンサの開発により、ゲノム医療の適応は研究、診断にとどまらず予防医療を巻き込んだ大きな適応範囲を示し続けている。元来ゲノム医療とは不変的なゲノムを対象とする横断的なものであったが、昨年末に報じられた一報がゲノム医療と言う単語の意味を大きく変容させた。
 2018年11月25日、中国の南方科技大学の賀建奎氏が声明を出した。遺伝子改変を施した赤ん坊を世界で初めて誕生させたという内容だった。
 同氏は今月生まれた双子の女児について、人の受精卵に遺伝子を改変できる「ゲノム編集」を施したと説明。 HIV(エイズウイルス)を阻止するよう遺伝子編集を受けてから生まれた中国人の双子の女の子はルル(露露)とナナ(娜娜)と名付けられた。同氏は「受精卵がまだ分裂を始める前から、HIVが侵入する入り口を閉じたのです」と述べ、 “designer babies(デザイナーベビー、受精卵の段階で遺伝子操作を施された子供のこと)"とする意図はないと主張した。
 遺伝子改変技術は開発から5年と未発達の技術であり、双子がオフターゲット効果を抱えている可能性が大いに懸念されているも、同じ月開催された米国科学アカデミーでのプレゼンテーションで同氏は双子がオフターゲット変異を来していない事を信用に値する多くのデータと共に提示した。同氏の発表直後より、わが国でもゲノム編集学会を含めて非常に批判的な反応が起きている。ほぼ同時に衛生学会の大槻理事長は昨年12月18日に学会として初めて「優生政策推進」撤回を表明したが、ゲノム編集の人体利用が抱える問題が社会医学系とは無関係な問題でない事を示している。
 これらの発表は米国科学アカデミーのサイトにて閲覧可能である。
http://www.nationalacademies.org/gene-editing/2nd_summit/index.htm
 米国科学アカデミーのサミットで生殖系列編集が許可される以下の10条からなる基準に照らしても同氏が行ったフライイングとも言える処置は許されるものでは無いが、米国を筆頭にゲノム編集の受精卵適応の許容範囲についての討議が早速始まるなど()、批判的な意見が多い中も新しい技術を受け入れる姿勢を見せている。倫理的ハードルの低い同技術の成体適応はすでにPMDA申請が開始されている状況であり、もはや神の領域の科学といっても良い事態であるが社会医学の重要な使命の一つに、細分化した医学領域をorganizeことがある。複数の社会医学系学会を束ねて、新しい予防医学の時代を切り開く事が今後進むべき道ではないだろうか。
理事会報告
田邉 剛
山口大学医学部医学科公衆衛生学・予防医学
産業衛生学会理事会
平成30年度第2回 7月21日(土)13:00~17:00
平成30年度第3回 9月14日(金)12:00~16:00
・予防医学・社会医学系領域からの提言について
   AMED、厚労大臣、文科大臣、経産大臣、内閣府に対して、日本医学界連合、衛生学会、公衆衛生学会、疫学会とともに提言がなされた。
「予防介入研究開発におけるtranslation概念について」、共通理解の醸成を目指す。
(添付資料3-11)
・倫理審査の申請について
   産業衛生学の分野で、大学以外の機関による研究で倫理審査が必要なときに、日本産衛学会が審査を行う制度について、申請書の様式などが決められた。
・「学会の目指す方向」の作成について
   本学会が目指す、優先順位の高い価値・理想について明文化し、今後10〜20年の学会の方向性を示すことで、その実現に向けて学会の資源を効果的に投入するとともに、学会員が協働してその実現に向けて活動できる体制をつくることを目的とする。
・「学術委員会」(仮)の設置について
   産業保険の学術の推進を担当する学会内組織を設置し、長期ビジョンの下に効率的、発展的に学術の推進に向かう活動を行うことを目的とする。確固としたサイエンスに基づいた発信を目指す。
・理事長推薦理事について
   特別なミッションのために特定の能力を持つ理事を必要とした場合に、選挙では無く、理事長の推薦により理事を選任する改変が検討された。
・ダイバーシティ推進委員会について:久保田理事
   ダイバーシティ推進委員会細則(案)の説明があり承認された。委員として各地方会及び各部会から推薦された19名の候補者が承認された。性別、年代、地方会、職種の属性バランスが考慮されている。委員長は委員の互選により決定される。
・役員等の定年制度について:武林理事
   前回理事会で承認され、総会で説明された役員等の定年制度の導入について、改めて運用ルールが確認された。基準は、任期中に70歳を超えないこととし、「代議員の選任に関する細則」に、「代議員選挙が実施される年の10月31日までに満68歳になる者は被選挙権を失う」の一文が追加された。
・学会誌の制作と運用について:堤理事
   産業衛生学雑誌の編集業務委託先を再検討した結果が提示され、2019年から業者を変更することが承認された。新ジャーナルの編集業務委託先を検討した結果が提示され、質疑応答の上、委託先を決定した。
・新研究会の設置について:斉藤理事
   新しく2つの研究会「第一次産業労働安全衛生研究会」「産業保健AI研究会」の設置申請があり、議論の上、承認された。次回総会での承認後、活動を開始する。
 新研究会の設置申請をする際には、事前に自由集会等を開催し、参加者実績等を提示するのが望ましいとの意見があった。
・根拠に基づく産業保健の推進について:笽島理事
   公的データの利活用について提案があり、意見交換が行われた。他学会との連携を検討して進めることになった。
・専門医制度委員会報告:森理事
   登録者数(指導医432名 専門医204名 専攻医251名)、今年度の専攻医試験の日程と出願者数等が報告された。
・社会医学系専門医協会報告:大久保理事
   専門研修プログラムが全国の都道府県で整ったことが報告された。
 指導医・専門医の更新要件となる単位について、学会や全国協議会の参加単位、地方会主催の研修会の参加単位として認定できるものを企画運営委員長や地方会長へ募ることが伝えられた。
・編集委員会報告:野見山理事
   Journal of Occupational Health の論文掲載料(APC)が新たな委託業者の取扱い方針によりドル建てで支払われることになったことが報告された。
 学会誌のプライバシーポリシーについて、今後見直される学会の個人情報保護に関する方針と整合性をとりつつ定めていくことが述べられた。
 今後、環境に関する論文投稿が増えることを見越して、JOHの名称の中にEnvironmentを含めることを検討する。
 Journal of Occupational Healthの2017年のインパクトファクターが1.285となったことが報告された。
・関連学会連携について:川上理事
   日本動脈硬化学会と相互で開催した合同シンポジウムがいずれも好評であり、組織同士の繋がりが深まったことから、今後も他学会との連携シンポジウムを積極的に進めていくことが述べられた。
学会関連
第91回日本産業衛生学会報告:森理事
   約3,300名の参加者があり、大盛況であったことが報告された。
第92回日本産業衛生学会準備状況報告:大同特殊鋼株式会社 斉藤理事
   2019年5月22日〜25日  名古屋国際会議場
第93回日本産業衛生学会準備状況報告:旭川医科大学 吉田理事
   2020年5月開催に向けて、日程や会場等の調整をしていることが報告された。
第94回日本産業衛生学会について:信州大学 野見山理事
   北陸甲信越地方会の担当
第28回全国協議会準備状況報告:五十嵐理事
   会場:東京工科大学
第29回全国協議会準備状況報告:東北大学 黒澤理事
   会期:平成31年9月12日(木)~14日(土)
   会場:仙台国際センター
   テーマ:「“働きたい”を支える産業保健」
   企画運営委員長:黒澤 一
産業医部会報告
春木宥子
松江記念病院健康支援センター
11月17日(土)14:00~17:00(中会議室)、以下の2つのテーマで実施されました。
テーマ①メタボリック症候群と生活習慣:
座長: 齋藤恵(日亜化学工業株式会社 統括産業医)
講師: 有沢孝吉(徳島大学大学院医歯薬学研究部予防医学分野 教授)
テーマ②メンタルヘルスケア一次予防のための「勇気づけの職場づくり」:
座長: 春木宥子(松江記念病院健康支援センター 顧問)
講師: 永藤かおる(有限会社ヒューマン・ギルド カウンセラー、
      日本心理学会認定心理士)
共同演者: 宇土 博(友和クリニック 院長)
①徳島県は糖尿病の死亡率が全国よりかなり高く推移してきた。しかし2000年時の年齢調整死亡率が男性は全国1位、女性も1位であったのに、2015年にはそれぞれ16位、12位へ低下した。しかし香川県は男性4位、女性3位とあまり低下していない。徳島地区では日本多施設共同コホート研究J-MICCSTUDY(生活習慣病予防に関する研究)に参加し、2008年2月にベースライン調査(調査票、血液、DNA、健診データ、血管年齢)がスタートし、2013~2018年で第二次調査(質問表)を実施し、2025年まで約15年の追跡調査(がん、脳血管疾患、心疾患、糖尿病)が行われる。今回は、食パタンーンとメタボリック症候群との関連について報告された。食事パターン1(不溶性食物繊維、Ca、VitD、VitC、カロテン、水溶性食物繊維、Mg、イソフラボン)では、血圧や血糖の低下あり、メタボリック症候群有病率の低下がみられた。コーヒー摂取では、摂取量が多いと低下、中性脂肪も低下した。大豆食品摂取量や摂取頻度とインスリン抵抗性との関連は、傾向性有意が認められた。座りがち(Sedentary)でない生活活動とMS及びインスリン抵抗性との関連では、MS、腹囲高値、HDL-C低値に傾向性が認められ、インスリン抵抗性は有意に低下、MS有病率も低下(共に負の関連が見られた)した。これらの結果には交絡が補正しきれていない可能性があり、参加率が低く、測定誤差も含まれている。
ダイオキシン類へのばく露とMSとの関連については、濃度とMSとの関連が有意で、内分泌攪乱物質としての影響があり、肥満を起こしやすい。低炭水化物食と死亡率との関連については、関連が認められたが、エネルギーの減少分を動物性食品、植物性食品に置き換える場合で、死亡率との関連が変わる可能性があり、炭水化物の質(GI)も考慮すべきである。長期のコホート研究が少なく、アジア人における研究も少なく、更なる調査研究が必要である。
②ヒューマン・ギルド社は、日本におけるアドラー心理学の一大拠点で、研修会講師、カウンセリング、書籍執筆などを担当している永藤かおるアドラー・カウンセラーの講演とワークを体験した。欧米の心理学三巨頭は、アドラー・フロイト・ユングであるが、フロイトとユングが心の病を持った人の心理学(病理的)であるのに対して、アドラー心理学は健常者のための心理学である。根底に流れるのは、困難を克服する活力を与える「勇気づけ」と共同体に対する所属感・共感・信頼感・貢献感を総称した感覚・感情である「共同体感覚」の醸成で、共同体感覚は精神的な健康のバロメーターである。職場のメンタルヘルスにおいては、一次予防で、働く人自身の行うセルフケアと管理監督者が行うラインケアに係る。ストレスとは、様々なストレッサー、ストレスの表れ方についてもお話があり、メンタルヘルスケア対策としては五感を喜ばす行動を心がけることが基本で、山本晴義(横浜労災病院勤労者メンタルヘルス長)のストレス解消10か条(STRESS)が紹介された。S(sports)、T(travel)、R(rest & recreation)、E(eating)、S(speaking & singing)、S(sleeping & smile & sake)
 勇気づけのためには、相手の関心に関心を持ち、尊敬する気持ちをもち、困難を克服する活力があって信頼関係が生まれるが、勇気づける名人になるための3つのステップとして大切なことは、まず自分自身を勇気づける、そして勇気くじきをやめる、勇気づけを始めることである。それには勇気づける人(尊敬と信頼で動機づける、楽観的(プラス思考)、目的(未来)指向、聴き上手、大局を見る、ユーモアのセンスがある)と接して楽観的になりましょう。逆に勇気をくじく人(恐怖で動機づける、悲観的(マイナス思考)、原因(過去)指向、聴き下手、重箱の隅ばかりつつく、皮肉っぽい)は被害者意識の強い人でもある。 聴き上手になる3つのヒントは、自分が話したいという誘惑に克ちまず聞きそして一瞬手を止め膝を向け目線を合わせる、観察上手になる、相手を話し上手にさせる対応をすることである。ものの言い方にも気を付けること~トーンをあげた天使のささやき(プラスのセルフトーク)と、トーンの低い悪魔のささやき(マイナスのセルフトーク)では、どんな気持ちになるか、これについては二人一組になり例を読んで体感・体験しました。
 他者へは、感謝を表明する~やってもらって当たり前ではなく「有難う!」の出し惜しみをしない(有難う!はモチベーションをあげる言葉である)、聴き上手に徹する、相手の進歩・成長を認める(他人ではなくその人の前と比べる)、ヨイだしをする、失敗を許容する~これらで勇気づけを実践していきましょう。当たり前のことを、当たり前に実践できていることを認めること、「良い・ヨイ」はキープされ、次も頑張れる。
 失敗は、学習のチャンスであり、チャレンジのもとである。失敗を通じてどんなことを学んだと思う?もう1回チャレンジするならどんな点に気をつければいい?といった望ましい対応は再出発の言動力となる。  悪魔のささやき、天使のささやきの体験の後、自分自身のマイナスとプラスのセルフトークを書き出し、どんな時にその言葉が出るか、どんな気持ちになるか、ペアの方と話し、最後にペアの方へのプラスのセルフトークを交換・プレゼントしました。
産業看護部会報告
中国地方会産業看護部会幹事
井上 恵
中国銀行健康保険組合
 2018年11月17日(土)から18日(日)の2日間、島根県松江市の松江テルサにおいて第62回中国四国合同産業衛生学会が開催されました。
 全国の八百万(やおよろず)の神々が集まる神在月の出雲国(いずものくに)に中国四国9県から参加された各県の産業看護職の代表者14名と産業看護部会幹事4名計18名が集まり産業看護部会世話人会を1日目に開催しました。
 各幹事の挨拶のあと、落合幹事より①産業保健看護専門家制度に関する情報提供②中国地方会産業看護部会会員数と未加入者の現状③今後の組織活動について等の報告がされました。続いて、各県の代表者から自己紹介とそれぞれの活動状況として研修会・運営上の工夫や課題について発表していただきました。
 産業保健総合支援センターとの連携や共催、健康保険組合連合会からの助成金で事業運営と年数回の研修会を企画実施していること等、それぞれが活発な活動のために工夫している内容の情報交換ができました。会の役員・世話人の選任方法や役員の負担を減らす工夫、会員減少や研修会参加者の減少への対策等、共通の課題解決についての意見交換もできました。
 毎年開催している世話人会での交流は、産業看護職間の“ご縁”を深める大切な機会であることを『縁結びの地』で改めて強く感じました。これからも中国5県の産業看護職との連携によりさらなる活動展開につながるよう考えていきたいと思います。
 世話人会に続いて開催しました産業看護部会研修会では、『産業保健活動に活かすファシリテーションスキル~健康教育や会議に活かす場づくりと場の進め方~』のテーマで講師 野口和裕氏(有限会社NTX 代表取締役)と2名のサポーター細本清子保健師、久澄園子保健師にご講義いただきました。参加者53名が「ファシリテーションの概要」「場作りのスキル」「対人関係のスキル」について理論だけでなく、具体的でわかりやすい説明とグループワークでの実践を通してファシリテーションを体感し理解できる楽しくてとても学びの多い充実した研修会でした。
 研修会後のアンケート結果です。
 とても満足度の高い研修会でした。
 今後もより多くの産業看護職に学会に参加して頂けるように努めたいと思います。
 最後になりましたが、企画から準備、運営をしてくださいました委員の皆様と島根県の産業看護職の皆様に心より御礼を申し上げます。  
産業衛生技術部会報告
日本産業衛生学会産業衛生技術部会について

「産業衛生技術部会」中国地方会代表幹事
川崎医療福祉大学医療福祉学部 教授 田口 豊郁
E-mail: taguchit@mw.kawasaki-m.ac.jp
 日本産業衛生学会産業衛生技術部会は、2001年4月、高知で開催された日本産業衛生学会総会において承認(産業医部会、産業看護部会に次ぐ3番目の専門部会として)されました。産業衛生技術部会では、労働衛生の三管理の中でも、特に、作業環境管理(Working Environment Control)および作業管理(Work practice Management)を中心とした幅広い活動をしています。産業衛生技術者・衛生管理者が、その専門性をより高めていくための情報を発信しています。
中国産業衛生技術部会の主な活動内容
1.中国四国合同産業衛生学会
 第1回中国四国産業衛生技術部会研修会を第46回中国四国合同産業衛生学会(岡山、2002年11月16日)の中で開催しました。以後今日まで、中国四国合同衛生産業衛生学会の中で中国四国産業衛生技術部会研修会を実施し、第62回中国四国合同産業衛生学会(松江)で17回目となりました。
日時:2018年11月27日(14時~17時)、会場:松江テルサ 4階 研修室
テーマ:労働衛生の最近の話題、座長:森本 寛訓(川崎医療短期大学一般教養 講師)
演題1「オルトトルイジンのけい皮吸収による膀胱がん発症から学ぶ:化学防護手袋の選定、使用、交換を提案する。」、田中茂(十文字学園女子大学大学院人間生活学研究科 教授)
演題2「労働衛生の三管理とリスクマネジメント」、田口豊郁(川崎医療福祉大学医療福祉学部 教授)
2.日本産業衛生学会
第91回日本産業衛生学会(熊本)で、以下を開催した。
1)産業衛生技術部会専門研修会
 日時:2018年5月19日(土) 9:00~11:00
 テーマ:地元企業の労働衛生管理の実際
 座長:宮内博幸(産業医科大学産業保健学部)
 演題1「地元企業の産業衛生活動」、中川剛(株式会社野田市電子)
 演題2「黒崎播磨㈱の労働衛生管理について」安部太喜(黒崎播磨株式会社安全環境防災部)
2)産業衛生技術部会フォーラム
 日時:2018年5月19日(土) 15:30~17:45
 テーマ:我が国におけるオキュペイショナルハイジニストの育成や活用、展開
 座長:原邦夫(産業医科大学産業保健学部)
 演題1「オキュペーショナルハイジニストの役割と世界的な動向」、橋本晴男(東京工業大学)
 演題2「(公社)日本作業環境測定協会の認定オキュペイショナルハイジニスト」、飛鳥滋(公益社団法人日本作業環境測定協会)
 演題3「ISO45001運用における専門家の役割―OSHMSを効果的に運用するため専門家が実施すべき事項―」、斉藤信吾(中央労働災害防止協会技術支援部)
3.日本産業衛生学会全国協議会
 第28回日本産業衛生学会全国協議会(東京)で.以下を開催した。
1)公募企画5 「検知管・直読計の使い方、 リスクアセスメントでの活用法」
 日時:2018年9月16日(日)9:00~11:00 
 座長:村田克(早稲田大学)
 演題1「化学物質のリスクアセスメントにおける検知管と直読計の活用」、橋本晴男(東京工業大学)
2)公募企画7 「化学物質による経皮吸収ばく露防護:化学防護手袋の適正な選定、使用および交換(廃棄)を提案する」
 日時:2018年9月16日(日)14:00~16:00
 座長:田中茂(十文字学園女子大学大学院)、上村達也(化成品工業協会技術部)
 演題1「経皮吸収防止のための薄手手袋2枚重ねの有効性についての検討~化学物質を用いた実験用途を中心として~」、牛澤浩一(理化学研究所 安全管理部)
 演題2「パッシブサンプラ-を用いた手袋内外測定方法の開発」、宮内博幸(産業医科大学産業保健学部)
 演題3「手袋の透過に対するPIDセンサの活用方法の提案」、寺内靖裕(理研計器株式会社営業技術部)
 演題4「事業場における化学防護手袋の選択、着用、保守管理等に関する実態調査」、加部勇((株)クボタ)
3)部会企画3 産業衛生技術部会 シンポジウム
「わが国の産業衛生技術専門職について - ハイジニストの意義」  日時:9月15日(土)16:30~18:00
 産業衛生技術部会の活動状況については随時、ホームページで紹介しています。当部会へは、日本産業衛生学会員ならばどなたでも入会できます。日本産業衛生学会費以外の会費はかかりません。多くの日本産業衛生学会員がこの産業衛生技術部会へ参加されることを期待しています。産業医や産業看護、産業歯科保健の先生方の参加を歓迎いたします。

 マネジメントの父と呼ばれているピーター・ドラッカーは,マネジメントをその役割によって、①組織に特有の使命、目的を果たすこと、②仕事を通じて働く人たちを生かすこと、③社会の問題について貢献すること――すなわち、マネジメントとは、「組織の人たちを生き生きとさせ、高度な成果を上げる」こと――と定義しました。
 産業衛生専門職の仕事もまさに、働く人たちの健康と安全を確保し、生き生きとさせ、高度の成果を上げることと考えられます。産業衛生専門職の仕事は働くことの支援です。
産業衛生技術部会のホームページ http://jsoh-ohe.umin.jp/
産業歯科保健部会
産業歯科保健部会報告
森田 学
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 予防歯科学分野
1.産業歯科保健部会研修会報告
2018年11月17日に開催された第62回中国四国合同産業衛生学会(於 松江)の歯科保健部会研修会について報告します。毎年、本研修会は参加者が少なく、活動の広がりを苦慮しています。「予想外」と言えば自虐的になりますが、今回は総計11名と、沢山の方々が参加していたきました(写真)。特に、広島大学の大学院生が数名来ていただいたことに感謝します。
さて、研修会テーマは「唾液を用いた歯周病検査」でした。ギネスブックにも紹介されているように、歯周病は「世界的に最もまん延している感染症」の一つです。中高年以降で歯を失う原因のトップであり、また心疾患、糖尿病、低体重児出産のリスクを高めるといわれています。
その時に、歯科健診を受けることなく、例えば家庭や職場で早期発見できたらと考えるのは当然の流れです。集団歯科検診を取り入れている職場もあろうかと思いますが、歯周病検診では鋭利な器具を歯茎に挿入して調べるので、「痛い」、「出血する」ということで被検者の評判が悪いのが現実です。そこで、痛みを伴わず、簡単に採取できる唾液を使って歯周病の早期発見につながる可能性を、松本健太郎先生(松江市開業)、伊藤博夫先生(徳島大学)、江國大輔先生(岡山大学)にお話ししていただきました。敏感度や特異度、コスト、迅速性などの観点から、まだまだ改良の余地はあるものの、唾液検査の有用性は高まっているのではと感じております。
2.最近の歯科保健トピックス
 フッ素濃度が1450ppmの歯磨剤が多数市販されるようになりました。これまでは最高950ppmでしたので、約1.5倍の濃度になります。ご存知の通り、フッ素の入った歯磨剤が日本で広く市販されるようになって以来、むし歯(う歯)も減少の一途をたどっています。フッ素入り歯磨剤の普及だけが、う歯の減少の原因ではありませんが、まずは家庭・職場の洗面所に一つ確保していただくのもよいかと考えます。
編集後記
日本産業衛生学会編集後記第32号

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 
公衆衛生学
伊藤 達男
 晩冬の候、会員の皆様方におかれましてはいっそうご清祥のことと慶賀の至に存じます。日本産業衛生学会中国地方会第7回目のWeb版ニュースレターをお届けさせていただきます。今回は、各部会より部会報告をいただきました。是非ご拝読いただけますと幸いです。ご執筆いただいた皆様方誠にありがとうございました。

 奇しくも、平成最後のニュースレターとなります。昭和を懐かしむ間に平成生まれの社会人が続々と排出されて幾年か経過しておりました。昭和、平成の時代を経て私たちの活動が新しい年号の世代でも息づいている事を願ってやみません。「平成ジャンプ」というキーワードが巷を賑やかせておりますが、まだ数ヶ月の猶予がございますので今年こそはと思いつつ実行できていないあれこれにチャレンジできればと願ってやみません。

 さらにもう一つ重要なお知らせです。平成28年11月より荻野景規会長のもと、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科公衆衛生学分野が中国地方会事務局を引き受けておりましたが、荻野会長のご栄転に伴い事務局業務を新事務局へ引き継ぎを行いたく存じます。短い期間ではございましたがご執筆を担当いただいた先生方、お世話になった先生方、誠にありがとうございました。七転び八起きと言いますか100回転んでも足りないほどのご迷惑をお掛けしたかと存じます。これからも様々な場面でお世話になるかと存じますが今後ともご指導ご鞭撻いただきますよう何卒よろしくお願い申し上げます。新しい体制になります産業衛生学会中国地方会も何卒よろしくお願い申し上げます。

敬具